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後輩の後輩による仲直り

 結局何の話だったのか分からなかったが、夏川に「私にかかれば余裕です!」と宣言させたので結果オーライと言えよう。

 操りやすい子は本当に助かる。

 麗もこれだけ操縦しやすいと色々助かるのだが、麗がこれだけ純粋というかチョロかったら変な男にとっ捕まって、進んじゃいけない方向へ進んでヤンキーと化していたかもしれない。

 そう思うと、やっぱり麗は麗のままで良いやと思ってしまう。

 俺と付き合っている時点で進んじゃいけない方向へ進んでいるような気がするという真相には触れてはいけない。

 禁忌だ。


 ちなみになぜ俺の携帯の電話番号を知っていたのかもついでに問いただしておいた。

 麗と連絡先を交換したのは知っているが、夏川は絶賛麗と喧嘩中である。

 そんな中で麗から連絡先を聞き出しているとは思えない。

 仮にそうなのだとしたら夏川はとんでもない大物である。


 結論から話すと「先輩と福城先輩がこの前ファミレスで飲み物取りに行った時に、先輩携帯置いてったじゃないですかー。その時にですね、コソッと開いて携帯の電話番号登録しておいたんですー。私の携帯の番号も先輩の携帯に登録したつもりだったんですけど上手く出来てなかった見たいですね」とかほざいていた。

 しかも追い打ちをかけるように「画面ロックとかしておいた方が良いですよ。浮気とかバレたら大変ですから」と余計なことを口にしていたので夏川のこめかみ辺りをグリグリしておいた。




 昼休み。

 空き教室で麗と飯を食う。

 だが、今日はひと味違う。

 というのも、『先輩! 昼休み辺りに福城先輩と会いたいんですけどどうすれば良いですかね?』という相談を受けていたのだ。

 麗を夏川の所へ向かわせることを一瞬考えたが、何が起こるか分からないことを考慮すると人目の少ないこちらへ夏川を連れてくるのが最善策であるという結論に至った。


 もちろん麗に夏川が来ることは伝えていない。


 「一颯。なんで私ってあんなにクールキャラ演じなきゃいけないんだろう……。結構疲れるんだけど」


 なんか嘆いているがまぁ、どうでも良い。

 というか、それ勝手に君が演じてるだけだよな。

 さっさと辞めちまえば良いのに。

 そう思うが麗には麗なりのプライドがある。

 もしくは今更キャラ変をする恐怖。

 麗が突然教室で「ぷりぷりプリティー! うららーな感じ!」と天真爛漫になったら普通に引かれると思う。

 その上で麗は精神がぶっ壊れた判定されて、可哀想な人扱いされるだろう。

 うん、間違いなくこっちだわ。


 「ねぇ、一颯。聞いてる?」


 あれこれ考えていると麗は知らぬ間に俺の元へと近寄って肩を大きく揺する。

 麗の匂いが鼻を刺激し、ちょっと変な気分になる。

 夏川が来る予定無かったら間違いなく男のスイッチがオンになっていた。

 夏川に感謝しておこう。


 「聞いてる。聞いてるから、揺するのはやめてくれ」


 そんなやり取りをしていると勢い良く扉が開かれる。


 「先輩ー! お待たせしましたー」

 「……。なんで夏川さんが居るの?」

 「なんでって言われましても。私もここで一緒にご飯食べようと誘われたので」

 「私は誘った覚えないんだけれど」

 「俺も誘った覚えはないぞ」


 夏川のやつ開幕早々とんでもない爆弾を投下してくれやがったな。

 しかも、大嘘なのがまた良い味を出している。

 きっと、第三者視点であれば面白いのだろうが綺麗に俺が原因だと偽られてしまっまたので楽しんでいる暇がない。


 「一颯誘ったの?」


 頷いたら殺されると本能的に理解出来るような視線を送られる。

 ゆっくりと首を横に振る。


 「って言っているけれど? どういうことかしら?」


 さっきまで素を見せていた麗とは思えないぐらいクールなキャラクターを演じる。

 切り替えの速さが素晴らしすぎて普通に羨ましい。


 「えー、先輩もう忘れちゃったんですか?」

 「お前マジで酷いな。夏川が『先輩! 昼休み辺りに福城先輩と会いたいんですけどどうすれば良いですかね?』っていうから教えてやったのに。この仕打ちはないだろ」

 「冗談ですよー、せーんぱいっ。教えてくれてありがとうございます」

 「お、おう……」


 突然素直になった夏川に動揺してまともな反応ができない。


 「私、先輩に頼まれたんですよー。『これ以上喧嘩してるの見るに堪えないから夏川止めてくれ』って。私ったら信用されてるんですねー。彼女である福城先輩じゃなくて私に頼まれちゃったんですもん」


 ニュアンスとしては間違っていないが、言葉選びが煽りにしか聞こえない。

 夏川のワードセンスの問題なのか、それとも夏川の意図的なものなのか、俺の性格が悪すぎてそう聞こえてくるのか……。


 「へー。それで?」


 麗は納得いかないようで腕を組み、ジト目で俺を見つめてくる。

 だが、それ以上口には出さない。

 麗はこの間謝らないと宣言していた。

 自分が頼られない原因を作ったことを自覚しているからこそ、睨むだけで済ましているのだろう。

 睨むのもやめて欲しいですけどね。

 まぁ、罵倒されないだけマシだ。


 「だから謝ろうかなって。そもそもこんなしょうもないこと私気にしてないですし。接しにくくても仲良くしてくれる人は居ますから大きな問題じゃなくないですかー?」

 「……」

 「別に福城先輩が許してくれないのならそれはそれで私的には良いんですけどねー。ただ、先輩は喧嘩やめて欲しいと思ってるんですよー? ここで福城先輩が意地を張ったら先輩、見限っちゃうかもしれませんねー。なんか、私に気ありそうですし、奪っちゃいましょうか?」

 「ね、ねぇーよ」

 「アハハ。先輩ったら隠すの下手くそですねー。キョドっちゃってますよ」


 キョドった理由は別にある。

 単純な話、童貞がこんな美女に奪う宣言なんてされてしまえば動揺の1つや2つしてしまう。

 ただそれだけで、それ以上でも無ければそれ以下でもない。


 「まぁ、こんな先輩のことは置いておいてですねー」


 夏川はわざわざ置いておいてとジェスチャーまでしている。

 人をイラつかせる能力が長けてて凄いなと思います。えぇ、本当に。


 「福城先輩の勝ちで良いですよ。私の負けです。福城先輩の方が接しやすいですよー!」

 「勝ったけれど負けた気がするんだけれど……」


 夏川は勝ち誇った表情を浮かべ、勝ったはずの麗は納得いかない表情を浮かべる。

 この流れでお互いにどうでも良くなったのか、麗が勝ったからなのか分からないがいつもの感じに戻っていた。

 嬉しい半面、俺が頭を抱えてた時間を返して欲しいと切に願う。

 そんな真剣に向き合っていなかっただろうって?

 それはそれこれはこれだから……ね。

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