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お礼を兼ねて

 全校集会で愛を叫んだ日から3日経った土曜日。

 俺のあだ名は「勇者」となり小馬鹿にされるような感じで呼ばれている。

 ちなみに、全校集会があった次の日に職員室へ呼び出しをくらい大目玉を食らった。

 学年主任に怒鳴られ、担任はニヤニヤしながら俺の事を見つめており、なぜか麗も一緒になって怒られてくれていた。

 学年主任は麗が可愛いからなのか何なのか分からないが麗への対応は甘く、俺への当たりはとてつもなく痛いものであり、その光景を学年主任の隣で見ていた担任は肩を震わせていた。

 挙句の果てに怒られ終わったあと「面白いな」とコソッと耳打ちして鼻歌交じりに職員室の奥の方へと消えていったのだ。

 マジでこの教師信用できるなと心から思った。

 俺たちだけで解決出来ない何かがあったら頼るつもりだ。




 さてはて、土曜日なのに外出している理由は1つしかない。

 遊びに出かけるからだ。

 麗と出かけるのだがこれはデートではなくあくまでも遊びという括りである。

 というのも、今日は俺と麗と奏太の3人で出かけるからだ。


 奏太を誘ったのは俺だ。

 これだけの成果を生み出すような提案をしてくれた奏太に少しぐらいお礼をしてもバチは当たらないだろう。

 どんなご褒美が良いのだろうかとあれこれ考えた結果、学年のアイドルとして追いかけていた麗とのお出かけが良いだろうなと思ったわけである。


 最初はこんな柔らかいものではなく麗と奏太を2人で出かけさせようと思ったのだが麗に「2人は嫌だ!」と拒絶されてしまったので致し方なく俺も着いてきている。

 この提案を奏太にした時は「え、俺良いの? せっかくなんだし2人で楽しんで来いよ」と気を使われてしまった。

 上手く説得して今に至る。

 俺が楽しむことが目的ではないというわけだ。


 今日はあくまでもガイド気分で2人と関わろうと考えている俺は当たり前のように30分前集合を心がける。

 我ながら素晴らしい行動力だ。


 10分前になれば奏太がやってきて、5分前になると麗がやってくる。


 「何も聞いてないけれど今日は何するんだ? ボウリングか? バッセンとかでも良いぞ」

 「何? バッセン行きたいの? それ最後ね。今日は映画行くよ」

 「ふーん。一颯セレクト?」

 「まぁそうだなぁ。チケットはもう買ってあるし」

 「マジか。一颯のセンスって地味にズレて……あ、いや、なんでもないです」


 初動こそ大口叩いていた奏太だったか尻すぼみになり、最終的には何も無かったことにした。

 やはり、麗の睨み顔はどんな男も怯ませる。


 「安心しとけ。今超絶人気のアニメ映画だから」


 興行収入ランキングでグングンと上位作品を追い抜いている作品だ。

 作品名は『美味しいラブコメディはデザートの後に』である。

 甘さとほろ苦さを併せ持ったドキドキ青春ラブコメであり、なぜか日本全体で大ヒットとなっていた不思議な作品だ。


 「お、俺も見たかったんだ」

 「やっぱり俺たち気合うな」

 「流石だな」


 ベシンっと俺の背中を叩く。

 痛いのでやめていただきたい。

 そんな絡みをしている最中、麗は恨めしそうにこちらを見つめていた。

 どうしたんだというような視線を返す。


 「わ、私もそれ見たかったし。その……『美味しいラブコメディはご飯の前に』ってやつ」


 俺と奏太は顔を見合わせてしばらく黙る。

 突っ込むべきかスルーすべきか。

 迷いに迷った挙句、スルーすることを決めた俺たちはそっとチケットだけ麗に渡しておく。

 麗はチケットを確認したあと顔を赤くしていたので自分のミスに気づいたのだろう。

 自分が仲間外れだと思って無理矢理割って入ってくるなんて可愛いところもあるじゃんとニマニマしていると背中を思いっきり叩かれた。

 俺はサンドバッグじゃねぇーからな。




 ジュースやポップコーンを購入し映画館へ入場する。

 麗と奏太を隣同士にしようと画策したのだが、お互いがお互いに「真ん中は一颯が座れ」と煩かったので仕方なく真ん中に座った。


 当初の目的である奏太の労いが何も出来ていない。

 結局気を遣われてしまい、麗と奏太が絡む時は何かと俺を噛ませて3人で行動してしまっている。

 きっと最終手段を使わざるを得ないんだろうなぁと、頭の中で何度も奏太と麗の2人を演出する場面のシミュレートをする。

 あーでもないこーでもないと考えているうちに映画は終わってしまっていた。

 何だか柔らかいBGMが流れていたなぐらいの記憶しかないレベルだ。


 「そこのカフェで感想戦でもしようか」

 「カフェとかオシャレだな」


 とりあえずカフェに連れていくだけ連れていき、俺は一旦トイレで離脱しようとする。

 無理矢理2人っきりの状態を作ることを妄想し、1人で満足してしまう。

 はっきりしておこう。

 紛うことなくこれは自己満足である。


 「早く帰ってこいよー」


 席を立ち上がると奏太は片手を上げて見送ってくれた。

 麗は目を瞑って味わうようにコーヒーを口につけている。

 本当に味わっているのか、場の空気を誤魔化すためにとりあえずコーヒーを持っているのか不明だ。

 コイツら大丈夫かよと思いつつも、喋らざるを得ない状況になったら喋り始めるだろうと2人を信用している。

 薄い信用を置きながらこれっぽっちも溜まっていない尿を消化して、こっそりと帰ってくる。

 カフェには入らずにまずはカフェの外から2人の様子を眺めておく。

 ここから見た段階で話が盛り上がっているようだったら俺は違うところぶらつこうと思う。

 そんなことを思案しながら席の方へ目を向けると話す仕草どころか2人とも手元にある飲み物と睨めっこしているだけだ。

 この人たち本当に陽キャなのかよ、人見知りも良いところじゃねぇーかと頭を抱えながら仕方なく席へと戻る。

 奏太へのご褒美……と思ったがこれ以上はご褒美どころか負担になりそうなので致し方ないだろう。

 今日は仲良くなるプランに変更だ。

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