第1章 プロローグ②
調べを進めると、幾つかの謎が生じる。
まず、原子力潜水艦建造を計画するのであるならば、国立であり既にノウハウを熟知している【日本原子力研究開発機構】に日本政府として正式に依頼が行くのが本筋。それが何故、民間機関であるNARSなのか?
そのNARSと現段階で原子力を用いる必要のない海上自衛隊との接点は何なのか?
そこで、意外な人物が調査線上に浮上してきた。
NARSと蜜月な関係を保ち施設に頻繁に出入りし、何やらこの不穏な計画を首謀していると言われる人物。
その人物こそ、海上自衛隊の資料館で私にあの手紙を見せた教官。
横井哲也二等海佐であった。
昭和天皇崩御で湧く、一九八九年一月。
海上自衛隊幹部候補生学校の正門に突然現れたという横井。
現れた際は、身なりもみすぼらしく浮浪者と見間違う程の容姿だったそうだが、二冊の大学ノートにびっしりと書き綴られたレポートを持って現れたそうだ。
題名は『潜水艦戦術と戦略、その応用』
そのレポートに目を通したとされる、当時の学校長である西澤勉海将補。
(西澤は数年前に失踪後、行方不明扱いなっている)
レポートの内容に驚嘆した西澤は、すぐさま横井を呼び寄せ特例として模擬試験を受けさせた。座学、航海術、砲科に於いてほぼ満点に近い類稀な成績を叩き出し、西澤の特別な図らいで海上自衛隊幹部候補生学校に入学。
以来、西澤の秘蔵っ子として重宝され、彼から海上自衛隊の全てを学び、現在は教官という立場から数多くの海上自衛隊幹部を育ててきた。
出生地、経歴共に……不明。幼い頃は、福島県の施設で育ったと言うが、詳細については何ひとつわからず調査中。現在は、結婚して妻と息子の三人家族である。
勤務態度は折り紙付き。至って真面目な性格であり、在学中を含め数十年と問題や規律違反を起こした事は皆無だ。
この横井が過去に持参したとされる問題のレポート内容だが、未だに海上自衛隊内での公表はおろか、レポートの所在も西澤と共に現在も不明である。
そして、もうひとつ。
民間の小さな研究室だったこのNARSに突然、巨額の資金援助と技術提供を持ちかけ、自らも研究者として実験開発を行うNと名乗る謎の男。
実質NARSは、このNを名乗る男が経営共に実権を握り、彼の個人的ラボとまで言われる。
そんな天才科学者程の才能を持ちながら論文の発表は一度も無く表舞台には一切現れず、所在も本名も明かさない謎の男Nと、海上自衛隊の横井が目論む計画が次第に明かされていくのだが……
それは信じ難くも世界を震撼させる恐ろしい出来事の序章だと、この時の私はまだ知る由も無かった。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
『面白かった』『続きが読みたい』と思って頂けましたら、下にある☆☆☆☆☆から、是非とも応援お願いいたします!
面白いやんか⇒星5つ。 おもんないんじゃボケ⇒星1つ。
正直な感想で結構ですが、傷付かない程度でお願いします。
また、なろうランキングもポチっとしてくれると嬉しくて泣き崩れます。
更に、ブックマークもして頂ける優しい読者様には、年末お歳暮でも送らせて頂きますw
是非ともよろしくお願いします!
また、連載中であります……擬人化した精子が人間になる迄を描いた新感覚学園ファンタジー『女神転精』も併せてお読み頂けると嬉しいです。
作者ページ、またはこのURLからお進みください。
https://ncode.syosetu.com/n3796gv/