ワンチーム
「よう、湊」
学校に着くと、淳が下駄箱の前に立っていた。
「もう、来てたのか早いな」
「お前らが遅いんだよ」
「俺たちは食料買って来たから」
そう言うと芽衣が両手に持ったビニール袋を持ち上げた。
「おう、ご苦労なこった。さ、入った入った」
まるで家主のように二人を出迎えている淳はいつもの制服姿ではなく“ONE TEAM”と書かれた白いTシャツに黒い短パンそれにビーチサンダルといつにも増してラフな姿であった。
「おい、ちゃんと灰落とせよ。吸い込んで肺がんにでもなったら大変だからな」
「あ、ああ」
二人は来ている服を叩いて、上履きに履き替えた。
「たくさん人がいるな」
「ああ、そりゃあ近隣住民に呼びかけたからな。俺の親もいるぜ」
「そうか」
「ところでお前らの親は」
「俺の母さんは今鳥取に行ってて。芽衣の方はここよりもっと近い避難場所に行ったらしい」
「はあ? じゃあなんで芽衣ちゃんはここにいるんだ? 親を離れて湊と一緒にいたいって言ったのか? ラブラブだね」
湊は芽衣の方を見た。
「私、昨日湊んち泊まってたからそのまま来たのよ」
「わ、バカ!」
湊は思わず芽衣の口を塞いだ。
「ほほう、親がいないからって思い切ったな、湊」
淳はニンマリと不敵な笑みを浮かべた。
「か、勘違いすんなよ」
「何を?」
「え、ええと…」
「お風呂は別々に入ったよ」
「はぁ〜」
芽衣は湊の心情も知らずにズバズバと事実を話す。
「おう、でも一緒に寝たりしたんじゃないのか?」
「うん。二人で抱き合って寝たよ」
「おっほ〜。お前も隅に置けないな〜湊」
淳は笑みがこぼれて、上機嫌だった。
「う、うるさい。こいつが勝手に…」
「おいおい、人のせいにすんのか? お前も了承したんだろ」
淳は湊の肩に腕を回して来た。
「う…」
湊は言い返す言葉が見つからなかった。
湊は淳から目をそらしてあたりを見渡した。
「お、よ、よく見ればこの学校の生徒がたくさんいるな」
「ちっ、恥ずかしがりが」
「本当だね。まるで授業参観みたいだね」
「ああ。それよりお前らどうせ今日も一緒に寝るんだろ。どこの部屋使うんだ?」
「え、俺たちで選んでいいのか?」
「ああ。自由に使えだって。ただし綺麗に使えよ」
「そうだな、どこにする?」
湊は芽衣の方を見た。
「お前らのことだからどっか小さい個室がいいか?」
「え〜。私クラスメイトとかと話したい」
「そうか。んじゃあまあ、適当に使えや。俺二階の俺たちの教室にいるからさ」
「ああ。ありがとう」
淳はそう言って階段を上がって言った。
「俺たちはいつでも逃げられるように二階の非常口の近くにでもしとくか」
「うん」
二階の非常口に一番近い教室は理科の実験室だったが、薬品だらけの部屋で寝泊まりするのは嫌気がさしたので、その近くの音楽室に入った。
中には誰もおらず、何日も人が出入りしてないせいか少し埃っぽく感じた。
「とりあえず、ここにしよう。疲れただろう。ずっと重いもの持って歩いてたから」
「うん。もうクタクタ」
「適当に何か食べたり飲んだりしてていいぞ。俺ちょっとさっきの理科室でろうそくか何か持ってくるから」
「うん」