《08..王都モフチラータ》
「――――フッ!」
ザシュッ!!!
「――――ハァッ!!」
ズバァッ!!!
道中、襲いかかってくる魔獣を次々と討ち取っていくオカメ。
正直、斬撃が全く見えないんですけど…?
簡単に首が飛んでくこの魔獣達、私だったら到底太刀打ち出来そうにないんですけど??
結論。
この人、滅茶苦茶強くね?
その後ろに隠れる様についていく、苺柄のタオルケットを胸と股間を隠すように巻いた男。実にシュールな絵面だ……。
何で男のくせに胸まで隠してるのかって??そりゃ、中身が『純情乙女』だからでしょーが!!
「そういえば、オカメさんは何故あの洞窟に?」
何か用事であそこにいたって言ってたし。
「固っ苦しいで、呼び捨てでえぇよぉ。アタシはさ、ギルドの依頼を受けて、あの洞窟の調査に向こうとってん。あぁ、これは機密事項なんやが…まぁえぇわ。何でもな、四神を司ると言われる四種の閃光の1つ、『白い閃光』があの洞窟の方に落ちたという噂がギルドの上層部に入ってきてな。その真意を確かめる為にアタシがその極秘任務を受けたってわけやね。」
……あれ?白い…閃光??
私は手にした大剣を見る。
「白い…閃光…」
「そ。白、緋、蒼、碧の4色で『四種の閃光』。1か月ほど前に国の重要拠点の1つの街が『天燃ゆる厄災』によって壊滅しかけたんやけど、その四種の閃光が退けたらしいねん。
アタシは直に見たわけちゃうから、それが核撃魔法やったんか殲滅古代兵器やったんかは、よー知らんのやけど…とにかくアタシらにとっては、えらくありがた~いモンやっちゅー事やな。そやから尚のこと、その真意を探る必要があったというわけや。
もしそんなモンがあったとしたら誰でも手に入れたくなるやんか。悪どい奴なんかの手に渡ったらえらい事なるし、そうなる前にアタシが確保せなあかんちゅーことや。ってな訳で、ここで手柄を立てて、実績あげたろ思とるねん!!ふひひっ」
成る程、確かに…それで、『噂を嗅ぎ付けた盗人に私がバッタリ出くわして、身ぐるみ剥がされた上に口封じに毒殺されかけた』……という風に勘違いしたのも納得がいく。
……が。
「……それってさ……もしかして、コレ??」
私は大剣をオカメに見せる。
確かこの剣、あのバカでかい大蛇を倒した時、『白い斬撃』で首を飛ばしたんだよな…。
私は、洞窟での出来事を、私が転生してきた別世界の人間である事だけを伏せ、オカメに詳しく話す事にした。
「成る程…で、あの洞窟の中で、コレを見つけた…と?……うーん……」
オカメは隅々まで大剣をじっくりと調べている。
「……これといった能力も魔力も感じんなぁ。」
…………はぃ?
「いや、だって確かに大きな蛇をぶった斬ったはずなんだけど……?」
「……でもこれ、どんだけ鑑定しても、ただの大剣やで。何にも感じひんし。」
そんな…マジか…
おぃ、コアラ、お前も見て……………ないわ。気絶してたし。
私の思い違いやったんやろか…。
つか、随分静かだなぁ、と思ったら、頭の上で寝てやがったよコイツ…。
「……ま、アンタの話からすると、あの洞窟には他には何も無さそうやし、そうギルドに報告するかぁ。
あ、あとでそのアンタが倒したっちゅう蛇、素材を取りに行かないかんな。
まぁそれはアンタを医師に届けたら、アタシが取りに行っといたるから、安心して治療受けときぃ。」
何から何までご親切にどうも。
――――と、そんな会話を交わすうちに、森を抜けたようだ。
「ほら、見えてきたで。あれがアタシ達『モフチラ族』の国の王都、『モフチラータ』や。」
森を抜けた草原の遥か向こう、まだ遠くはあるものの、それはそれは物凄く大きな街が地平線に現れた。その街のちょうど真ん中あたりに一際高く聳え立つ城が見える。
「おぉ…これが……この世界の……王都……!!」
私、ハリーは、まるで西洋のジオラマの様なその壮大な風景に期待と希望を胸に秘め、ひとつ大きく身震いをするのであった。