《79..帰路につく》
「その話は……確かなのか?」
ウーニ王は騎士に向かって問いかける。
「……はっ、只今、プレーリア王国の使者が到着し、その使者の話によりますと、間違いないようです……。」
「父上。プレーリア王国といえば、不屈の要塞が誇る世界屈指の堅守国家であったはず。
その守りに長けたあの国が、そんな簡単に落ちるとは考え難いのですが……。」
「……うむ……。それに、プレーリア王の元にもプレーリアの『勇者』が控えていたはずだ。まさか、『勇者』をもってしても破れたというのか……?」
ウーニ王はドサッと玉座の背に身体を預ける。
プレーリア王国とは、『プレーリードッグ』『ジリス』の擬人が納める地底国家である。
国のほぼ全てが岩場で出来ており、高温の気圧に加え、高く聳え立つ渓谷に囲まれた大自然による天然の要塞に守られた、堅守に特化した国家であった。
「ならば……率直に聞こう。プレーリア王は……存命なのか?
そして……プレーリア王国を落としたのは……いったい何なのだ?」
「……はっ。それが……使者は酷く怯えており、プレーリア王の安否も確認出来ていないようです……。
酷くただただ怯えているのみで、何者によるものかさえもわからなかった……と。ただ言えるのは、すくなくとも他国からの侵略でも、かの侵略の悪魔によるものでも無かったようです。」
「……そうか……。」
ウーニ王は深く溜め息を吐き、天を仰ぐ。
「いつ我が国にもその脅威が訪れるかわからぬ。チコ団長、トゥトロ団長、ミツキ団長。直ちに諜報部隊を編成し、情報をかき集めよ。
もし難民が我が国に流れてきたならば、温かく受け入れよ。
そして、早急に武力を高め、脅威に備えよ。」
「「「はっ。直ちに。」」」
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国王への謁見を終えた俺とコアラは客車に揺られ、ギルドへ戻る帰路につく。
「うはぁ~、緊張したぁ~……!!」
何か一気に疲れた。
言うなれば、生前の世界で言うと総理大臣とサシで会談を行うようなものだ。緊張するなと言う方が野暮だというものであろう。
《だがしかし次の目的はオイラと同じ聖獣探しだな!》
コアラが横に腰掛けて?伏せて?口を開く。
すると、『ペイデ』が念話で頭の中に声を流し込んでくる。
===ウーニ王……カ。ドコカ『ウォレット』ヲ思ワセル賢王デアッタ……。フッ……流石ハ奴ノ子孫ダ。我ハ子ヲ持タナカッタ故……少シ羨マシクモ思ウ。因ミニ残リノ2体ノ『聖獣』ハ『青龍:パンドラゴン』ト『玄武:地練武蛇』デアル。頭ニ入レテオクガイイ===
そうだ。
俺たちは日常を過ごす中で情報を探りながら残りの2体の聖獣、あわよくば最後の勇者を探す任務を受けたのだ。
あの謁見の後、朱の勇者ラピとチラ学園長は魔導学園へと戻っていった。
そして、王城の一室を借りているモッチャンは……
―――ガタンッ!!
「――――きゃっ!!」
客車の車輪が石を跳ね、座面が大きく揺れる。
そして、その反動で俺の二の腕に柔らかく暖かいものが押し当てられる。
「………あっ、ごめんなさい、ハリー様♪」
そのままどさくさ紛れに腕にガッチリと絡み付くモッチャン。
何故か帰りの客車に、ちゃっかりと同乗しているのであった。