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《74..オカメの決断》

▽視点 《ハリー》


「6歳で闇窃盗団を壊滅……って、むちゃくちゃですやん……。」


ここは突っ込みを入れざるをえまい。


「だっはっは……そうか?」


「うふふ~、チコちゃんは~、そんな感じで強い子だったからぁ~、その腕を見込んでぇ~、ワタシの()()でコテツマスターに弟子入りさせてもらったの~~。

ただぁ~、まだその頃のチコちゃんは小さすぎてぇ~、冒険者登録出来なかったしぃ~、例え冒険者になれたとしてもぉ~、任務次第で何日もラピちゃんに会えなくなるのを嫌がったチコちゃんはぁ~、お城を護るお仕事『聖騎士団』を選んだのよねぇ~~♪」



この世界では、戦士系の『ジョブ』は、下記の様に別れている。


『冒険者』

王都のセンターギルドを頂点とし、各地点在する街のギルド支部に所属する者達。拠点とする街は基本的に自由に選べるが、ランクが上がる程に拠点外からの応援要請が増える為、要請に応え、遠征しなければならない。独立組織のギルド運用である為、王国による縛りは特例を除き、無いに等しい。

戦闘対象は主に魔獣となる。


『王国聖騎士団』

国王を頂点とし、王族、及び王城を堅守する名誉ある騎士団。ランクは存在しないが、役職にて段位が存在しており、中でも団長、副団長クラスはSランク冒険者に相当する。護衛対象が王都である為、王族の遠征時の護衛以外では王都を出る事は無い。ほぼ他国との有事の際や、侵略の悪魔(ニンゲン)との戦闘にのみ剣を奮う。

戦闘対象は主に対人となる。


『聖魔導隊』

大神官を頂点とし、ユーミ神殿大聖堂を堅守するエリート魔導騎士の護衛団。王国騎士団のユーミ神殿版といったところか。

魔法と剣を武器に戦い、大神官直属は武器に、聖母直属は魔法に秀でた者が集まる。どちらかと言えば、堅守に重きを置いている。

余談だが、ユーミ神殿にはギルド支部が無い為、戦闘対象は対人、魔獣となる。


『憲兵』

街の警備隊。領主(主に街長の立場)の傘下であり、法の元に罪人を裁き、悪事を取り締まる。城門憲兵もこれに付随する。

戦闘対象は罪悪人となる。


『自警団』

領主傘下の小さな村にて、村の若者や腕に覚えのある者が集まって出来た小さなパトロール治安部隊。村に危害を加える魔獣や罪悪人が戦闘対象となるが、主に素人集団となる為、殆どの場合、ギルドへ依頼をかけるのが一般的。



……となる。


ちなみにチコ団長はたった4年で副団長に、更にそこからたった2年で団長の段位に着任したという。何と14歳で聖騎士団のトップに辿り着いたのだ。


うん、化け物だな。



「聖騎士団長になったチコちゃんがぁ~、ワタシの孤児院に毎月たくさん寄付してくれるしぃ~、ラピちゃんの学費も全部出してくれてるの~。子供達もラピちゃんも、たぁぁくさん、チコちゃんに感謝してるのよぉ~~♪みぃんな、チコちゃんがぁ~だぁい好きなのよねぇ~~♪うふふ♪」


オマツさんがカウンターで頬杖をつきながら笑顔で話す。少し首を傾げて話す仕草が大人ながらに可愛いと思う。


「だっはっは、オマツさんには俺も頭が上がらないくらい感謝しとるんだ、まだまだこの程度じゃあ孝行には足りんさ。

………と、まぁ、そういう事情の上、本題に入るわけなんだが……」


「………えっ?」


チコは姿勢を正し、改めてオカメに相対すると、深く頭を下げた。

突然の出来事に目を白黒させるオカメ。


「……あっ……あの……え?」


「……すまない。初めて君の顔を見た時に、申し訳ないが、君の事を少し調べさせて貰った。

君の名前は……パイドナ・オカメーヌ。

君は、ラピの……本当のお姉さん……だね?」


俺とモッチャンは一言も発する事なく、状況をただ見守る事しか出来なかった。


オマツさんは気にする様子もなく淡々と洗い物をしている。


ただ店内は相変わらず出来上がった男達が飲んで唄って騒いで賑わっている。故に重苦しい雰囲気では無いように感じるが、俺達の空間はまるで時間がとまったかのように静かだった。

なぜならば、チコ団長も、オカメも、お互いを探し求め、交わる事が無かった二人の時間は15年にも及ぶのだから……。


やがて、囁くようにオカメが口を開く。


「アタシは……生きているのかさえわからない……でも、それでも、ただ生きている事だけを信じて、ひたすら妹を探し続けとた……。ずっと……ずっと……。」


そしてオカメは俯いていた顔を上げると、しっかりとチコの目を見て、ハッキリとした口調で話を続ける。


「生きているとして、あの子は酷い目にあわされてないか……苦労していないか……泣いてないか……不安で不安でいっぱいやった……。少しでも早く見つけてあげたい……助けにいきたい……そればかり思い続けとた。夢にまであの子が泣いている姿が出てきたくらいや。


……だけど……。


あの子は、団長、アンタの優しさと愛情をいっぱい受けて、あんなに良い子に育ってた。凄く幸せそうな元気な瞳をしとた。

うぅん、団長だからこそあの子は幸せに生きてこれたんや。いつも一番近くにいてくれたから……。


だから、だからな、あの子はもう、ちゃんと()()()()なんやと思う。血の繋がりなんて関係ないねん、あの子は……チコ団長、アンタの妹や!だから……どうかこれからもあの子を宜しく頼むわ!」


「オカメ君……」


「にひひっ、大丈夫、アタシの両親には適当に言っとくし、そもそも妹が生きているのかさえわからない状態やたからなぁ。ま、アタシもそれがきっかけで、令嬢なんて堅苦しいものやなくて、こうして自由な冒険者になれたんやし、それに加えて妹の無事も確認出来て、旅の目的も達成出来たしな!

アタシはこれからは本当の意味で自由にやってくわ♪」


オカメは曇りの無い笑顔を見せる。

まるで長年の積み重なった肩の荷が降りたような、清々しい笑顔だった。


「ま、アタシもちょくちょく逢わせてもらうし、あの子にはこの事は内緒やで♪……という事は、アタシも団長の妹て事やな……?

オマツさ~ん、アタシにイェール追加で!あっ、勿論、()()()()のオゴリでな♪」


一瞬、キョトンとなるチコ。だが、すぐに破顔し、ニッカリと笑う。


「……だっはっは、こりゃ一本とられたな!よし、今日は全部俺のオゴリだ!じゃんじゃんやってくれ!」


カウンターの向こうでオマツは静かに微笑みを浮かべていた。


そして、俺の横ではモッチャンが泣き潰れていた。それはもぅ、うん、鼻水垂らして美人が台無しな顔だな。……美人だけど。



オカメは、その後しこたま酒を飲んでリバースしまくったのは内緒の話。





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