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《06..コアラ奮闘》

手が震える。

それも仕方ないかもしれない。初めて戦い、初めて魔獣を倒したのだから。


「やった……助かった……。」


大きく深呼吸をする。


「……あっ、そうだ、コアラ!?」


私は弾き飛ばされたコアラを見る。


《オイラなら大丈夫だ。弾かれる寸前に、咄嗟にあいつの尻尾を蹴って衝撃を殺したからな!!オイラ、なかなかやるだろう?はっはっは》


気絶してたくせに。

どうやら弾けとんだ先の壁で頭を打ったらしい。頭にデカいタンコブが見えた。

まぁ無事で良かった。


《それよりもハリー、あんた怪我してるじゃないか!!》


戦闘に夢中で忘れていたが、私の脇腹から血が流れている。

我に返った私は、その痛みを思い出し、苦痛に顔を歪める。


「あ痛たたたた……無茶苦茶痛いわコレ……しかも、何だか息が苦し……」


《まずいな…まさか毒か!!?ここでは治療も薬も無いからな……何とか洞窟から出て治療しないといけないぞ……歩けるか!?》


コアラは心配そうに私の周りをくるくる回っている。


「……何とか…頑張ってみるよ……」


私は痛みを必死に耐え、壁に手をつき、先程入手した大剣を杖がわりにして脚を引きずる様に歩みを進める。


ポタポタと赤い血が私の後ろに道を作る。


少しづつ、少しづつ前に進む。




それからは運が良かったのか、一切他の魔獣に遭遇する事なく、随分の距離を歩いてきた。コアラが導くように(道も知らないくせに)先導して進む。


《……ん?遠くに何か見えるぞ…?…あれは……光!?》


暗い岩だらけの洞窟の遥か先に、小さくポツンと光が見えてきた。

暖かな風が光の方から流れてくる。ほんのりと森林の香りがする。

これは…



《外だ!!外に出られるぞ!!ハリー!!》


……ドサリ。


《…………え??》


コアラが振り返ると、倒れたハリーの姿。


《おい、ハリー!!もうすぐ外だぞ!!頑張れ!!死ぬなよ、ハリー!!!》


コアラはハリーを頭に乗せると、必死に引っ張る。

ハリーはコアラよりもかなり大きい。

引きずるように出口に向かうが、コアラの身体のサイズからしてハリーの身体は重すぎる。それでもハリーを救うべく必死に引っ張る。


……ズル……ズル……


引っ張って、引っ張って、とにかく引っ張る。


……ズル……ズル……


引っ張って、引っ張って、引っ張る。力みすぎて鼻水を吹き散らかす。ハリーの呼吸が弱くなっていく。


……ズル……ズル……


それでも引っ張って、引っ張って、引っ張る。ハリーが少しづつ冷たくなっていく。涙が出てくる。


……ズル……ズル………ピタッ。


《もう……駄目だ……》


鼻水と涙がコアラの顔をグシャグシャにする。



落胆していたその時、洞窟の出口からスッとコアラ達に影が伸びる。

その影の主が口を開く。



「………何でこんな所に人が倒れてるの??」




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