表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/316

《67..真実を知る》

《グゥッ……我ハ『侵略の悪魔(ニンゲン)』ナノダゾ……コノ世界ヲ屠リシ存在ナノダ……ソノ我ガ……コンナ『ウィルス』一匹ゴトキニ……!!!!》


深淵(アビス)』は黒炎を操り、ハリーに向けて高質化させた剣、槍、拳を複数形成し、怒濤の攻撃を見せる。


だがそのどれもがハリーの、更には『聖剣』によって叩き折られていく。


《ナゼダ……!!!!ナゼ、コノ我ガココマデ圧サレテイル……!!!?ナゼ我ノ攻撃ガ届カナイ……!!!?貴様ハイッタイ何ナンダ!!!!?》



黒炎の勢いが、少しづつ削られていく。



「あー……なんだ。俺様は『勇者』だ。……んで、テメェが圧されている理由……だったか? そんなのは簡単だ。」



テメェは俺様を……そして……ハルノを怒らせた―――――。



ハリーは聖剣エルハザードを右上段に構え、ジリジリと『深淵(アビス)』に迫る。



《チッ……コノママデ終ワルト思ウナヨ………》



「…………むっ?」



深淵(アビス)』は地面を蹴り、高々とグングン飛び上がっていく。

そして、その頭上に超高圧の波動の弾を練り上げ、その大きさは瞬く間に大きくなっていき、真っ黒い渦が蠢いていく。


《ケケケケ!!!!最早容赦セズ、全テヲ破壊、消滅させてくれるわ!!!!》


   ―――――トン。


《……………エ?……………アレ……………?》


上空に上昇する『深淵(アビス)』の背中に何かが当たる。



いつの間にか半球体状に張り巡らされていた()()()()



絶対零度の氷籠(アイス・ボックス)



深淵(アビス)』は地上に視界を落とすと、忌々しいこの氷の壁を展開させたと思われる『蒼の勇者モッチャン』の姿を見つける。



《クッ……!!!………コッ……コノ虫ケラ共ガァァァァァァァ!!!》



「貴方は……このわたくしが命に代えても……逃がしません!!!!

そして、この距離でその波動の弾を放てば……貴方自身も無事ではすみませんよ!!!!」



《クソ共ガァァァァァァァ!!!!カマウモノカァァァァァ!!!! 貴様ラ……纏メテ死ネェェェェェェェェェ!!!!!》


怒りに我を忘れた『深淵(アビス)』が上空から地上へ向けて巨体な波動の弾を放つ。



「………テメェが死んどけ糞野郎!!!!」



【斬撃:明鏡止水】



リィィ―――――ン……………



一度、鞘に納めた『聖剣』の鍔を再び鞘に添えた左手の親指で弾き、右手で静かな波紋が水面に静かに広がるかの様に……静かに『聖剣』を『深淵(アビス)』に向けて引き抜き、横に薙ぎ払う。



―――リィィ―――――ン……………ズパババババババババァァァァァァン!!!!!



《グァァァァァッ、馬鹿ナ、馬鹿ナ馬鹿ナ馬鹿ナ馬鹿ナァァァァァァァ…………コノ我ガ………コノ我ガァァァァァァァ―――――――!!!!!》



ハリーが放った斬撃は光のヴェールの様な形状をした一筋の刃と化し、波動の弾もろとも『深淵(アビス)』を捉え、無数の斬撃を炸裂叩き込みながら貫通両断し……大空に消えていった。



黒い塵の様になって『深淵(アビス)』の身体が四散し、消滅していく。



「………ん?」



ふと気付くと、いつの間にか何もない空に小さな裂け目が現れていた。


「あ……マズっ………」


四散していくと思われた『深淵(アビス)』の黒い塵が裂け目に吸い込まれ、消えてしまう。



「むぅ、逃したか………。

だが、まぁ……とりあえずタイマンは俺様の勝ちだ。仇はちゃんと討ったぜ?なぁ、ハルノ。」



【ハリー……ありがとう……。】


そっか……『勇者』はハリー、あんただったんだね……。だから私では『聖剣』がうまく扱えなかったんだ……。


何より私は……皆の敵、侵略の悪魔(ニンゲン)だったなんて……。


ははっ、可笑しいよね、()のはずの私が『勇者』ぶってたなんて……!

私が最初から侵略の悪魔(ニンゲン)だって分かってたら……早くにハリーに気付いてたら……オカメだって死なずに済んだかもしれないのに……。



ハリーに身体の所有権を渡している間、私は別意識の中で『聖剣』の中にいる『ペイデ』に話を聞いていた。



本来、ハリーだけが転生し、『白の勇者』になるはずだった事。


不運にも人間(ニンゲン)の私が偶然『キーコード』に辿り着き、ハリーと一緒に転生してしまった事。


転生先で『導きし者』としてハリーを導くはずだったコアラだが、敵である人間、ハルノが混ざってしまったが為に『勇者』と『聖剣』を構築するシステムを保守的にシャットダウンし、()()()()()した事。


そしてこの戦いでコアラが()()し、システムシャットダウンが解除された事で『勇者』と『聖剣』の封印が解け、『ハリー』と『ペイデ』が出てこれた事。



因みに、サラリと話を流してしまっているが、『ペイデ』とは、かの初代勇者、『英雄ペイデ』その人である。



彼ら初代勇者達は命が尽きると共に、ある目的の為に自らの意思を『勇者武器』に融合させたのだという。

ある目的とは……いづれわかる日が来るのだそうだ。




ハリーは剣を収めると、モッチャンの元へ駆け寄る。

倒れたオカメの顔を……その目に焼き付ける為に……。


「あら?ハリー様、何か雰囲気変わられましたか……?

ワイルドになられたと言うか……獣と言うか……。

あっ、そうですわ!因みに、オカメ様はまだ生きていらっしゃいますわ!」



――――――えっ!?


「ただ、一刻も早く緊急治療が必要ですわ……。わたくしの回復魔法ではお救いする事が………不可能ですの……。精一杯、回復に努めておりますが、最早、時間の問題かと………。」


とりあえず生きていてくれて良かった……。


オカメの容体を見る。


顔面蒼白で、いつもの白い顔が更に青白く血の気が引いてしまっている。

肩口から脇腹にかけての裂けた傷口は、モッチャンが氷で凍らせて止血している。


だが……素人目で見てもわかる。呼吸は弱々しく、今にも止まってしまいそうなくらい事態は深刻だ。一刻を争う………だが、どれだけ急いで王都への帰還日数は来た道の時間まるまるかかる。それは3日にも及ぶのだ、到底間に合う筈がない………。


どうすれば………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ