《65..対 侵略の悪魔③》
《ナゼ我、『深淵』ガ、コノタイミングデ貴様ラヲ誘キ寄セル罠ヲ仕掛ケタノカ理解シテイナイ様ダナ……。
四人揃ッテイナイ……マシテヤ未熟ナ貴様ラ『ウイルス』ナド敵デハナイ。
ソノ未熟ナ貴様ラヲ未熟ナウチニ誘キ寄セテブッ殺シニ来タンダヨ!!!!
我ハ先ニ早マッタ『混沌』トハ違ウ。
マダ育ッテイナイ……ソレモ、タッタ2人……シカモ出来損ナイガ1人混ジッテイル貴様ラニ勝チ目ナド微塵モ無イノダ!!!!》
ガキィィィン!!
グガガガンッッ!!
キィィィィン!!
俺とオカメは二人がかりで饒舌に喋る侵略の悪魔と斬り結ぶ。
全力で最速の攻撃を加える。………が、黒炎を高質化した刃で全て無効化される。
「はぁぁぁぁっっ!!!!」
ギィィィィン!!
身体を回転させ、遠心力を加えた俺の渾身の袈裟斬りも……
「やぁぁぁぁっっ!!!!」
ガガガガガガンッッ!!!
オカメの炎を練り込んだ高速の連撃も……全て正面から受けられてしまう。
状況は実に思わしくない方向へと進む。次第に黒炎の熱気に呼吸も徐々に苦しくなってきていたからだ。
《……ケケケ……コレデ終ワリカ……?》
『深淵』と名乗った侵略の悪魔は、どこか余裕ぶったかのようにじわじわと俺達を追い詰めるように黒炎の範囲を広げ、退路を断っていく。最早、逃げ場も無い……。
《最早、逃ゲル事モ叶ワヌゾ……? ………ムッ!!?》
『天使の大翼!!!!!』
モッチャンが隙を突いて最強の神聖魔法を単身で発動し、『深淵』に向けて放つ。
通常は複数で魔力を合わせなければ発動出来ないこの魔法も、モッチャンの手に懸かれば単身発動も容易い。
《小賢シイワ!!!!》
『深淵』は片手で『天使の大翼』の波動を受け止める。
だが、それも計算のうち。以前現れた超巨大侵略の悪魔、『混沌』と言ったか?……には通用しなかった事を知っていたのだから。
すかさず俺とオカメは波動の光に紛れ、『深淵』へと同時に斬りかかる。
《………ヌルイワ!!コレシキ読ンデオルワ!!》
ガキィィィン!!!!
「………なっ……何だと………!!!?」
俺とオカメの剣の斬撃は簡単に両手で防がれてしまった。
「………とでも、言うと思ったか?」
《………何ッッ!!!?》
俺とオカメの後ろから、モッチャンが飛び込み、槍形態とした『神杖ケーリュケイオン』を突き立てる。
「この技は相手の強さを問いません!!」
『過剰再生衝撃』
バゴォォォォォォォッッ!!!!!
《グッ………グオァァァァァァァ―――――ッッ!!!!!》
『深淵』の右腕が肩口から弾け飛び、後方に転がる。
流石は本家の技だ。モスケが放った時よりも鋭く、破壊力も段違いだ。
《………トデモ言ウト思ッタノカ?》
――――――は?
腕が弾け飛び、痛みにうち震えたはずの『深淵』だった。
しかし、瞬時に何事も無かったかのように顔を上げると、何食わぬニヤついた顔でこちらを見据えた。
《我ワ生命体デハナイノダカラ……コンナ技ナド通用セヌワ塵ガァ!!!!》
ズリュッ……と黒炎が具現化し、弾け飛んだはずの腕が再生する。
「………化け物め………」
《イイ加減、貴様ラト遊ブノモ飽キタ。…………死ネ》
ドカッッ――――!!!!
「ぐっ……は……っっ………!!!!」
『深淵』の巨大化した拳がモッチャンの腹を捕らえ、めり込む。
その衝撃をモロに受けたその身体は後方に吹き飛び、焼けた大地の上を転がっていき……その身を焦がしながら岩にぶつかってやっと止まる。
「………ガフッ………!!!」
モッチャンの口から大量の血が溢れ、地面に血溜まりを作る。
「モッチャン………!!!!」
俺は吹き飛んでいくモッチャンをつい目で追ってしまう。
《………何処ヲ見テイル………貴様》
「…………ぐっ………あ!!!!」
……ガッ!!!!
いつの間にか目の前に移動していた『深淵』の腕が俺の首にめり込み……体ごと持ち上げられる。
《コノママ……………死ネ………!!!!》
「ハリー!!!!!」
オカメが反射的に『深淵』に斬りかかる。
「………!!!!?」
俺は微かに『深淵』の意識がオカメに反応するのを感じ、背中が凍り付く。
マズイ……!!!!! 良からぬ思いが身体を駆け巡る!!!!
「ダメだ!!!!!来るな、オカメ―――――――」
――――――スローモーションの様に時間が流れる。
『深淵』の禍々しい剣の形に形成した右手が袈裟斬りに斬りかかるオカメの剣を力で押し返し、弾き飛ばす。
返す刀で無防備に晒されたオカメの身体を――――――
右肩から入り左脇まで抜けて
切り裂いた―――――――。