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《62..厄災再び》

一方、最後の首を請け負った女性のみで構成されたパーティ『戦姫艶団(ヴァルキュリア)』は苦戦していた。


リーダーはレイヤーの入ったブラウンカラーのミディアムボブで、やや大人メイクのスリムな長身タイプのヨモギである。

全身を黒い鎧に身を包み、黒い柄に真っ赤な刀身が施された剣を操る、Aランク冒険者のヨモギの加護は『暗黒騎士(ダークナイト)』。


氷結ブレスの首の前に相まみえ、武器を構えるヨモギ。


そして、長い銀髪を頭の両サイドで纏めたツインテールに、青いクリッとした瞳の少女のツクネ。全身を白を基調にピンクの装飾を施した鎧に身を包んだ彼女は、Bランク冒険者の『軽装騎士(ライトナイト)』である。

ツクネは手にするショートソードとライトシールドでパーティの盾役(タンク)として仲間を守る。


ただ、ヒュドラ戦で既にライトシールドは破壊されてしまっている為、ヨモギのサポートに徹した戦いに切り替えているようだ。


「くっ……!!……また来るぞ!!」


ヒュドラの氷の首から氷結のブレスが横凪ぎに放たれる。


「まっ……魔導結界障壁……!!!」


褐色肌に紫と黒のツートーンのロングソバージュヘアで、更に紫と黒を基調とした、やや露出多目なセクシーお姉さん系のカンナ。片目が流れた髪で隠れているが、隠れた目にはオラクルが備わっている。


彼女はBランクの『黒魔導師(ブラックサマナー)』である為、攻撃魔法を得意とするが、防御魔法を苦手としており、『多重結界障壁』を使えなかった。


パキパキパキィィィィンン………


カンナの発動した結界障壁が、強大なブレスを受けて簡単に弾け飛ぶ。


氷結ブレスが『戦姫艶団(ヴァルキュリア)』の四人に無慈悲に襲いかかる。


「――――マズい……直撃する……っ……!!!!」




次の瞬間、ブレスと四人の間に飛び込み白い影があった。


「――――させねぇッス!!……結界障壁多重展開!!」


パキパキパキィィィィィィンン……!!!!


ズバァァァァァァァァァンン!!!!


ヒュドラが放った氷結ブレスは、白い影……モスケの展開した5枚重ねの結界障壁で左右に捌かれ、直撃する事無く彼女達を避けるように後方に二列の氷の道を作っていた。


「すっ…凄いのね……多重結界はカンナちゃんも僕も出来ない高等技術なのねっ……!!それでいて僕らよりも下のランクなんて、信じられないのねっ……!!」


そう口にするのはパーティの回復後衛型(ヒーラー)を担う『神聖導師』のシロミツだ。神聖導師はモスケの『神官』の1つ上の上位加護の1つである。

彼女は真っ白い導衣に身を包み、青髪ショートヘアをポニーテール風に纏めたボクっ娘の少女である。



「さぁ、二つの首は墜ちたッス!!援護するんで、こちらも倒して終わりにするッスよ!!」



モスケは大技で炎の首を倒した後、そのまま氷の首退治に移行していた。


後から兄貴達もこちらの援護に来てくれるッス、そしたら全員がかりで袋叩きにしてヒュドラ退治は終わる……そう思っていた。



…………が、おかしい。


向こうは戦闘を終えて、とっくに此方に援護に来てもいいはずなのに、一向に来てくれない。


「まさか、このタイミングで俺達に試練を……?」


いや、そんな訳がない。これは演習ではない。これは国家レベルの機密調査の実践であり、しかも相手は厄災レベルの魔獣を相手にしているのだ。




モスケは横目でハリー達の状況を見て…………驚愕する。



転がる血塗れの『紫雷来豪』の面々。


更にはハリー、オカメ、モッチャンの3人も血を流し、片膝を突いて肩で息をしている。


えっ……何故……!!!?いったい何が……!!!?



まさか、ヒュドラが復活したのか……!!!?



モスケは横目を前に戻す。


「―――――えっ―――――?」


思わず間抜けな声を洩らす。


それもそのはず、目の前には先程まで()()()()()()()()が無かったからだ。


そう、横目で隣の状況を見て、視線を前に戻す、瞬きほどの僅かな時間。


その僅かな時間の間にヒュドラの姿は消滅し、内臓をぶちまけ真っ赤な血の海に転がる大量の肉塊へと姿を変えていたのだ――――。





血が流れる腕を押さえ、オカメが口を開く。


「………ハリー、モッチャン………大丈夫か……?」


「はい。わたくしは……何とか……。」


「あぁ、俺も……大丈夫だ。くそっ、もうすぐヒュドラを倒せると()()()()()()()()……まさかこんな事になるとは……!!!」


「二人とも気を付けてな……アレは……ヤバすぎるで……」



ヒュドラ戦で感じていた重圧。

災厄レベルの魔獣との一戦。


確かに俺達はその重圧を跳ね退け、勝利目前まで迫っていた。


だが、その重圧の罠に気付けなかった……………油断。



ヒュドラの肉塊の向こうからヒタヒタと此方へ歩いてくる2m程の()()()()………。



その者から溢れる()()()()()()()()()()

あまりに大きく、重く、深い海の中……奈落の底の様な異常な重圧。


それは圧倒的な強者の風格であった。

王国最強の男、チコのそれとは似て非なるものであり、それをも遥かに凌ぎ、凌駕する者。




「……あれは……間違ありません……わたくしは一度だけ、あの姿を見た事があります……あれは……あれは……」


モッチャンが震えている。


あの『聖女』であり『稀代の勇者』が……である。



禍々しき者の()()()()()()()()()()()()()()に浮かぶ真っ赤な口が笑う――――――



「あれは―――――『侵略の悪魔(ニンゲン)』です―――――!!!!!!」




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