《61..対ヒュドラ②》
「我々『紫雷来豪』は雷の首を引き受けた!」
刀を両手に下げ、『雷』の恩恵を持ち、同属性が故に対処がし易いと見たチィが稲妻ブレスを放つ首にターゲットを定める。
「お前達、彼等にばかり負担をかける訳にはいかん!!今度こそはヤツを仕留める!!………いくぞ!!!」
「「「おぉ!!!!」」」
Aランク冒険者、チィ要する『紫雷来豪』のメンバー、タツヤとピピマルがチィの後に続き、その後方を後衛のコハルが援護する。
「壱ノ型:三日月!!」
――――――ガキィィィン!!!
チィの居合い斬りが首に命中する……が、やはり硬い鱗に弾かれてしまう。
「やはり刀が通らぬか……タツヤ!!動きを封じられるか!?」
「……任せろ。」
タツヤが前に出る。
タツヤは濃いブルーの髪色のショートカットの髪型で、切れ長の黒目をした整った顔立ちの寡黙な美男子である。
Bランク冒険者の斥候型であるタツヤは、短刀とワイヤー付き飛びクナイを自在に操り、その俊敏力で撹乱しながらワイヤーでヒュドラの首を絡めとり、動きを封じるとワイヤー越しに電撃を浴びせる。
バリバリバリィィィィッッ!!!
「ギギャァァァァァ!!!!」
電撃で僅かながら痺れを与え、自由を奪う。
「何とか捉えたが……長くは持たない。」
「了解!!一発デケェのお見舞いしてやるぜ!!」
ピピマルが僅かに高台に位置する後方の岩場の上に陣取ると、等身程もある弓を目一杯に引く。
ピピマルは金髪にバンダナを巻いており、つり上がった細い眉毛が印象的なイケイケボーイだ。
「よっしゃぁぁぁ!!コハル!!いっちょデカイやつ頼むわ!!」
「了解やぁ、いきますえ!!」
『中級雷撃!!!!』
結った長い黒髪と黒目が透明感のある白い肌に映え、赤と白を基調とした巫女服に身を包むBランク冒険者、コハルが手にする鉄扇をふるい、ピピマルの手にする矢じりに雷撃魔法を放つ。
「くぅぅっ……相変わらずキチィなこりゃ!!
はっはぁ!!喰らぃやがれぇぇぇぇぇ!!!」
バリバリバリィィィィッッッ!!!!ドゴォォォォンン―――!!!!
雷撃を帯びた矢がヒュドラの首を穿つ。
「ギギャァァァァァァァァッッ!!!!」
ヒュドラの首に命中したピピマルの矢が鱗の隙間を穿ち、刃を跳ね返していた硬い鱗を剥がす事に成功する。
すかさず飛び込んだチィの一撃が鱗が剥がれて露になった首に撃ち込まれる。
「弐ノ型:夜桜!!!」
居合いの連撃が肉を抉り、ヒュドラの血渋きが桜のように舞い散る。
「ギギャァァ……ァァァ…ァ………」
ヒュドラの稲妻ブレスを放つ首が激しく痙攣し、バリバリッ……と小さく放電すると、激しい衝撃音と共に地面に崩れ落ちていく。
稲妻の首が『紫電来豪』によって討ち取られた瞬間であった。
「おぉ……すっげぇ……首の1つが倒れたぞ……!!」
俺、ハリーは炎のブレスを放つ首をオカメと二人で斬り捌き、横目で倒れていく巨大な首を捉え、歓喜の声を上げる。
「ハリー、アタシが惹き付けるで、頼むな!!」
オカメはそう言うと、ヒュドラを挑発する様に炎剣を滾らせ、炎の飛ぶ斬撃を3つ命中させる。
炎の首はオカメの挑発に乗るように、炎の斬撃をものともせずにブレスを放とうと口を開け、炎を口の中で滞留させる。
「今や!ハリー!!」
「……よしきたぁぁ!!!!」
―――――ドゴォォォォンン!!!!
「―――グギッッ!!!!」
首の死角、顎の裏から俺は目一杯に大剣を下から突き上げた。
開けた口が強制的に閉じられ、当然、放たれるべき炎の塊はヒュドラの口の中で暴発する。いくら外郭の鱗が固かろうが、口の中ならば話は別だ。いくら自らの炎耐性のついた口の中とはいえ、練り込まれた高圧の炎ならば話は別であろう。
ヒュドラの口から焦げた黒煙が漏れる。
「モスケ、いけますわね?」
「当然だぜ、姉ちゃん!!」
「「「―――――偉大なる神の御加護―――光の導きを―――闇を穿つ聖なる波動を―――今此処に顕現せよ!!!!!」」」
凄まじい魔力の光が1つに収束されていき放たれる渾身の一撃――――
「「「穿て!!!!!『天使の大翼』!!!!!!」」」
―――――――カッ――――!!!!!!
焼き付いた口めがけて極秘神聖魔法が放たれる!!!!
「ギ……ギ……ャァァ………」
モスケとモッチャンが二人で放つ巨大な光線は、炎のブレスを放つヒュドラの首を跡形もなく消し飛ばしていた。
……これで……残る首はあと1つ……!!!!