《05..聖剣?を手に入れた》
「ただの石で出来た……剣??」
目の前に一振りの『石で出来た剣』が地面に突き刺さっている。
……あれれれ?
ゲームとか転生系の小説とかだとさ、普通…今の流れからすると、伝説の武器とかがここで出てくんじゃね??
それが、ただの石の剣??詰んだかな、コレ……
《ガァァァァアアァァァァァァ!!!!!》
大蛇はさっきの閃光で奪われていた視力も回復してきたのだろう。その頭を左右に振ると、再び私目掛けて牙を突き付けてきた。
ドゴォォォン―――
私は今度もギリギリ身を交わす。が、完全には避けきれず、大蛇の牙が脇腹を浅く切り裂いた。
「あぁぁぁああぁぁ!!!痛い痛い痛いぃぃぃぃ!!!!」
脇腹から血が流れる。
「わあぁぁぁぁ!!!!」
私は恐怖でおしつぶされそうになり、這いつくばる様に逃げる。
しかし大蛇は執拗に追ってくる。
気付くと私は壁を背にしており、逃げ場を失う。
ここまでか……
大蛇はニヤリと笑うと、トドメとばかりに牙を突き付けてきた。
《させるかぁぁぁぁ――――――!!!!》
蛇の側頭部に丸い塊が突撃し、的を外された牙は私のすぐ脇の壁に突き刺さった。
《ハリー、今のうちに逃げろ!!!》
丸い塊…即ち、コアラが叫ぶ。
「ありが………ハッ!!!……コアラ!!!危ない!!!!」
牙が壁に刺さった大蛇だったが、尻尾を振り上げ、鞭の様に振り回し…その尻尾がコアラに迫る――――
バキャッ……
コアラは尻尾に打ち付けられ、物凄い勢いて弾け飛んでいった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
私は恐怖とも気合いとも言えない声を上げる。
力を振り絞り、石の剣まで駆け寄ると、その柄を握った。
「石であっても剣は剣、無いよりはいい。せめて一太刀でも…」
柄を握る拳に力を込める。脇腹から血渋きが上がる。
だけど私はその剣を引き抜こうと引っ張る。
そして……
「あっれぇぇぇ!?…………抜けねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
力いっぱい引っ張るが、びくともしない。
そう都合よくいくわけが無いという事か!!?
大蛇は突き刺さった牙を抜くと、弾き飛ばしたコアラへと近付いていく。
そっちは抜けるんかい!!…と、軽くツッコミを入れる。
だが、事態は深刻。
コアラは気絶したのだろうか、動いていない。
大蛇は再びニヤリと笑うと、コアラに向けて大きな口を開く。
牙がギラリと光る。
そして、その牙がコアラ目掛けて打ち降ろされる!!
「はぁぁぁぁぁ!!!!石の剣よ!!!俺に仲間を護る力を貸せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
より一層の力を込め、柄を引っ張る。
その時だった。
ズッ……ズズズッ……ズバァァァッ!!!!!
石の剣はハリーの声に応える様に、ゆっくりと引き抜かれると、引き抜かれる軌道のまま、一筋の閃光の斬撃が大蛇へ走り、その頭を撥ね飛ばした。
撥ね飛んだ首がゴトリと落ち、遅れて首を失った巨体がゆっくりと倒れていく。
ズズゥゥゥゥゥゥゥゥゥン――――――――。
【斬撃:一閃】
地面には深く鋭い斬撃跡が残った。
私の手には、『石の剣』ではなく、光輝く一振りの『大剣』が握られていた。
「おぉ……めちゃくちゃ凄くね???この剣……」
だがハリーはこの時、まだ知らなかった。
その手にした『大剣』こそがかつての伝説とされた神具の1つ『聖剣』であり、これから巨大な使命に飲み込まれていく事を――――――――