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《58..女達の結束》

新しく煎れてくれたジモ茶に口をつけ、口の中に潤いを戻すと、話の続きを語り始める。


「数日かけて捜索隊をあらゆるエリアに派遣し捜索したんやが……全く手懸かりが掴めんやった。


4歳だったからなんて言い訳にはならへん……。アタシが弱かったから……震えて動けなかったからアタシは妹を救えなかった……!


アタシはまだ何処かで妹は生きている……そう思って、全国をずっと探し続けた……。オトンもオカンもアタシが旅に出る事を反対したけど……アタシはどうしてもアタシの手で妹を探したかった!!アタシのせいで!!アタシの目の前で!!大切な妹を奪われてしまった!!


だから……アタシは強くなる為に戦場を駆け回り、魔獣を狩り続けた……。強くなって復讐する為に……!!今度こそ足が震えない様に!!飛び出す勇気も持てる様に……!!


そして……まだどこかで生きていると信じた妹を……取り返せる様に……。」




涙が自然と溢れた。


今まで1人で、ずっと抱えてきた悩み。


それを今、心から信頼出来る仲間に始めて打ち明けられた。


溢れる涙を抑えきれなかった……。


モッチャンがオカメをそっと抱き寄せ、長い黒髪を撫でる。


自然とオカメの顔はモッチャンの胸の谷間に収まり、少し甘い香りがフワッと鼻を撫でていく。


ヨウに至っては涙と鼻水で顔がくしゃくしゃに崩れてしまっている。



「……誰にも言えず、お辛かった事でしょう……。でも、もう大丈夫ですわよ。

わたくし達は貴女様の胸の内を知り、苦しみを知る事が出来ましたわ。

ならばその苦しみをわたくし達で分かち合うことが出来るはずですわ♪

オカメ様の目的のお手伝い、わたくし達にも添わせて下さいませ。」



「………うぅぅ……ありがどう……!!おぉぎになぁぁ……!!」



オカメは溜めていた思いと想いの全てを打ち上げ、軽くなった心に安堵感が溢れ、暫くモッチャンの放漫な胸の中で泣き崩れるのであった。



あの日、突然奪われ、消息を絶った当時2歳のオカメの妹。

当時その子が身に付けていた、おくるみ。

そのおくるみには、こう記されていた……。



―――――――パイドナ・ラピコ――――――と。





涙を拭き、胸の中の思いを打ち明けた事により、目を真っ赤に腫らしながらもいつもの笑顔が戻ったオカメ。


「ありがとーな!二人のおかげでスッキリしたわ。」


「礼には及びませんわ♪わたくし達は仲間ですのよ、これからもお互いに溜め込まず、全部吐き出してしまってスッキリ致しましょう。」


「わ、私も微力ながらもお力になれる様にが、頑張りますっ!」


3人揃って笑顔を交わしあう。


だが、次の瞬間、夜の静寂を侵す者が現れる。



「「「―――――ッッ!!!!」」」



茂みが大きく揺れ、大木がへし折られ、その向こうから5mを越える巨大な影が現れたのだ。

目は暗闇に赤く光り、大きく左右に裂けた口には鋭い牙が並んでいる。

全身は硬い体毛に包まれ、両前足には鋭い爪が闇夜に輝く。


「Bランク魔獣……イビルベア……!!!」


全身真っ黒な巨大熊型魔獣、イビルベア。

ガルファングよりも個体の強さは格段に上をいく、超パワー型の魔獣だ。


それが3体も闇の中から這い出てくる。


「グオォォォォォォォォ!!!!!!」


イビルベアが咆哮し、獲物を捕らえるべく、巨体を揺らしながらこちらへ向けて突進してくる。あまりの巨体故に脚を突く度に地面が揺れる……!!



「任せて下さい!」


ヨウが大盾を構え、イビルベアの突進をその小さな身体で受け止める!……瞬間、ヨウはスルリと身体を入れ替え、イビルベアの後ろを取ると大盾を真横に払う。


ズドン!!!……という打撃音と共に、イビルベアの身体が横に()()()に折れ曲がり、遅れて弾け飛んでいく。


―――――と、残りの2体が同時にヨウに牙と爪を突き立てる……!!!!



「させませんわ!!」


モッチャンがケーリュケイオンを地面に突き立て、魔法を発動する。



――――――――氷河時代(アイスエッジ)―――――!!!!!



パキィィィィィン!!!!


2体のイビルベアが地面から突き出した無数の巨大な槍の様な氷結晶に閉じ込められる。



「トドメや!!!!炎剣レーヴァテイン!!!!」


オカメの剣に一瞬で炎が纏われる。


「はぁぁぁぁっっ!!!!」


スヒィ―――――ン……。


長い静かな剣撃が響き渡り………

鎧の様な筋肉に包まれた強固な2体のイビルベアの身体は思い出したかのように細切れにバラバラと崩れて落ち、更に遅れて爆炎に包み込まれ消し炭となり散り逝く。


一撃の様に見えた剣撃は、実は超高速度の()()の斬撃だったのだ。あまりに、速すぎて初撃のみが目に映っていたのである。


オカメは長剣を払ってイビルベアの血を払うと、鞘に長剣を納める。


「いっちょあがり♪やな!二人とも、お疲れ様っ!」



魔獣を仕留めた3人はお互いに笑顔で頷き合うと、何事もなかったかの様に焚き火に戻り、温かいジモ茶を片手に夜通しガールズトークに華を咲かせるのであった。




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