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《56..美女三人衆の手料理》


「この辺りの魔獣は殲滅したみたいやな♪」


オカメが周辺の見廻りから戻ってくる。


「………ん?」


戻ってきた光景に綺麗な顔をしかめるオカメ。



威勢良く戦闘開始のタクトを振ったものの、唯一出番が無く膝を抱えて沈む俺。


俺を慰めようとオロオロしながらペロペロキャンディを差し出しているヨウ。


それを見て嫉妬の涙を流しながらモスケの影から刺すような視線を送るモッチャン。


モッチャンに引っ張られてズボンが下がってしまったモスケ。


その有り様を見て爆笑するコアラ。


―――――まさに混沌(カオス)




「なんやのコレ……」


オカメが呆れて苦笑いを浮かべる。


………あれ?待てよ?


「コアラ……お前、普通に皆に混ざって動いたり喋ったりしてるけど、いつの間にバレてたんだ!!?」


よくよく思い返せば、いつの間にか当たり前のように会話に混ざってたな。


《ん?とっくにバレてたぞ?……特に、あのギルドマスターにはな。》


え?マジで?? そんな簡単にバレるもんなの?? それともギルドマスターが凄いの??


《っつーわけでだな、隠す必要は無くなったのだ。俺は一応、あんたのちょっぴり不思議な()()()って事になってる。……いや、誰がペットやねん!!》ビシッ!


勝手に自分でつっこんでる。

成る程、という事は、ギルドマスター認知の上……という事になるから、1つ心配が無くなったわけだ。


「それに、ハリー様の大剣が『聖剣』である事も御存じですわよ。」


「えっ、そうなの?」


モッチャンがなんか、くねくねもじもじしながら会話に加わる。

トイレでも我慢してるのかな?


「そりゃそうやろ、おんなじデザインの大剣を持ったペイデ様の彫刻がギルドのど真ん中にデカデカとあんねんから。

とっくにコテツさんはアンタを勇者候補て認識しとたで?」


「……マジか……。」


聖剣の件は、ナマクラぽいが故に、特に隠していたわけじゃないけど……何か俺が知らないところで色々バレてるんだなぁ。

という事は……やっぱりこれ、聖剣なんだな。いったいどうすれば覚醒?出来るんだろう……。


大剣を抜き、袈裟斬りに振り、そのまま水平に薙ぎ払う。

ヒュンヒュンと風切り音をたて、風を斬る。

身長ほどある大剣だが、一応、軽く奮えるし、それなりに扱える。

しかし、刃は付いているのに斬れない。あの時は確かに両断出来ていたのだが……謎だ。



「とりあえず、今日のところはこれ以上深入りせずに、ここで夜営の準備致しませんか?暗くなってから準備するのは危険かと思われますので……。」


「確かに、アタシも同感やな。ここは既に危険エリアや、視界が通るうちに準備しとくに限ると思う。いつ何処で襲撃受けるかわからんからな!」


「よし、じゃあ俺とモスケの二人でテント組み立てるから、女性3人は食事の準備頼めるかな?」


「「「了解!!」」」


「兄貴、さすがリーダーシップ、頼りになるッス!!」


「いや、別に俺はリーダーというわけじゃ……」


「いや、マジッスよ!?へへっ、こういうの何かキャンプみたいでワクワクするッスね、兄貴!!」


確かにちょっと楽しいかもしれない。ちょっとしたアウトドアみたいだ。



それに……リーダー……か。


オカメはもともと一匹狼だし、完全な本能型だから、人を使うのを苦手とする。


モッチャンは後方支援で一番適任かもしれないが、なぜか突然顔を真っ赤にしてくねくねしだす。


モスケとヨウは論外。自分の事でいっぱいいっぱいの状況だ。


コアラは……見た目も含めて漬物石みたい。


……という訳で、消去法で今は流れ的に俺がタクトを振っている形だが、本来俺だって人を使うタイプではない。故に、集団のリーダーとしての資質はそれほど高くないと思う。


ずっと1人で部屋に閉じ籠っていたのだから、コミュニケーションだってそんなに上手い方ではない。集団行動なんてもってのほかだったのだ。

故に仲間に囲まれた今の状態は、昔の俺からすれば意外な状況なのだ。


だから、そう考えると、俺達には本当の意味でのリーダーシップを持った仲間が必要なのかもしれない。


リーダー的存在……その必要性が、俺の頭をよぎっていた。



俺とモスケがテントを組み立て終えた頃、女性陣の食事の準備が出来たらしい。

女の子の手料理……ちょっとドキドキする。

忘れかけてるかもしれないが、俺は元、女の子だ。それでもやはり気持ちは高ぶるものなのだ。


ところが………である。


「…………。」


「…………。」


俺とモスケは引き気味に沈黙、言葉を失った。


……なんか、目の前に物凄い料理が鎮座している。


何だコレ?何かの奇抜なオブジェかな?

……あれれれぇ?女の子3人で、錬金術の実験でもやってたのかな?


色が紫色をしていて、変な形の脚がところどころに生えている。そして、ボッコボッコと泡立ち、鼻を突くような強烈な酸味の香りがスープ?から漂っている。


「………おぅふ」


これは想像の遥か右斜め上を行っている……女の子が3人揃って出来た料理が……コレ?


「ささ、ハリー、モスケ、遠慮せんと食べてーや♪」


「う、産まれて始めて、い、い、一生懸命頑張って作りました!!お口に合うかどうか……うぅぅ……」


「ハリー様、わ、わたくしが食べさせてあげま……やぁぁん、恥ずかしいぃぃですわぁぁぁぁ」


こ、これは覚悟を決めねばなるまい。

いや、まて、もしかしたら見た目はアレだけど、味は良いという可能性だってあるぞ!?


よ…よし、食べるぞ……!!!


震える手で料理をよそられた皿を受け取ると、スプーンでズブリと掬ってみる。

おぅわぁ……クセェ……吐きそうだ……。だが、美女3人に期待の目で見つめられているのだ、男だろ、俺!! 中身は女だけど!!!

俺は口を開けて掬った料理を口へと運ぶ……


《腹へった、もーらぃっ♪》


――――パクッ。


コアラが横から食い付いた。





お後は御想像にお任せ致します。


……………チ―――――――ン。





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