《04..初めての戦い》
「はぁ…はぁ…はぁ……。う、上手く逃げれたかな…」
かなりの距離を走って来ただろう。途中で別の魔獣に遭遇したが、その度に上手く交わして逃げてきた。
それにしても、この身体、脚が早い。地面を一蹴りするだけで10mは飛んでいた様な感覚だった。それに、身体も軽い。まるで地面すれすれを滑るように走る感じだった。
「逃げる事には問題無さそうだな、この身体。」
《物凄いスピードだったな!危うく振り落とされるところだったぞ》
「ごめんごめん、だって、あんな化け物、逃げるしかないし、逃げれただけ良しとしてくれよ。生き返ってすぐにまた死にたくないし」
私は戦闘なんて出来ないし、今の今まで、ただの引きこもり状態だったんだから。運動1つやった事無いし。
「……あれ?ここは…」
呼吸を整えて辺りを見渡すと、私達は広い空間に出ていた。洞窟内には違いないのだろうが、その空間は少し異質なものだった。
壁も地面も、まるで機械で綺麗に切り出した切断面の様な表面で、私の姿が映りそうなくらいツルツルだった。広さにして、ざっと100m四方くらいか。
天井には水晶の様な白く光る結晶が無数に突き出ている。
「何で此処だけ造りが違うのかな?この部屋だけ人工的な感じがする…」
《この空間は…あれ…?何か大事な事があった気がするのだが…思い出せん…》
「大事な事??例の勇者に関する事?」
《わからん…いや、知っていたはずなのだが…すまん、やっぱり思い出せん…》
「これも俺の尻のせいか…はっはっは、ゴメン」
《仕方ないさ。……おぉ?見ろ、真ん中あたりに何かあるぞ?》
空間の丁度真ん中あたりに、ぽつんと高さ1mくらいの石柱があった。
私は石柱に近付いてみる。
「なんだろう。ただのつるつるした石だな。」
====オマエニカクゴハアルカ====
―――――ん?何て?
「コアラ、何か言った?」
《いや、オイラ何も言ってないが?》
気のせいか。私は気を取り直し、石柱に手を伸ばしてみる。
====オマエニセカイヲスクウカクゴハアルカ====
また、声が聞こえた。やっぱり気のせいなんかじゃない。コアラのやつ、私を脅かすつもりだな?
「この灰色ゴム毬野郎、俺を脅かそうとしても、そうはいかな―――――」
ゴゴゴゴゴ……
突然地響きが起こった。
そして、壁が激しく弾け飛ぶ。
《ガァァァァアアァァァァァァ―――――――!!!!!!》
壁の中から巨大な蛇の様な魔獣が飛び出してきた!!
「…………嘘だろ……なんだこれ……」
身体中から血の気が引いていく。
身体が動かない…
だが……大蛇は赤く光るその眼で私を見付けると、容赦なく牙を突き付けてきた。ヤバい!!これはヤバい!!!モグラなんて比じゃないぞコレ!!!
《ハリー!!避けろ!!》
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
私は何とか身体を横に転がす。
私がさっきまでいた場所が抉れた。危なかった!!
だが、私はその場で腰が抜けてしまった。
速い!!速すぎる!!
こんなの、逃げられない!!!!
「どどどどどうしようどうしようどうしよう」
もう駄目だ…生き返ってすぐ死んでしまうなんて……
諦めかけたその時
====オマエニタタカウカクゴハアルカ====
またあの声だ。
もはや藁をも掴む思いだ。その声に私は応える。
「覚悟はある!!いや、覚悟が出来た!!!だから…だから、俺を助けてくれぇぇぇぇぇぇ―――――――!!!!」
《認証コード確認。機密キーを解錠、システム起動。神幻獣『白虎』構築…顕現……エラー。再構築……エラー。代行システム起動……承認。モデル『聖剣』顕現します。》
石柱に白い光の筋が走り、地面に沈む。
それに合わせて石柱があった場所を中心に、床いっぱいに魔方陣が現れた。そして、魔方陣が起動したのか、眩い白い光が円柱状に立ち拡がっていく。
「眩しい…!!いったい何が……!?」
大蛇も突然の光に怯んでいるようだ。
やがて光は収束していき、一筋の光となる。その光の根元には、何かが刺さっていた。
「………石の……剣???」