《48..若きパーティの出発》
特別カリキュラムが決行されて、はや1週間が過ぎた頃。
ギルドから昇格手続き完了の知らせが届き、俺達はギルドに来ていた。
「兄貴、何かお久しぶりっすね!」
「あぁ、久しぶりだな、モスケもヨウも、力付けてるのがわかるぞ!順調だったみたいで何よりだ。」
「そぅなんすよ、聞いてくださいよ、姉ちゃんの鬼指導ったらないんすよマジで!」
「ちょっと、モスケ!落ち着きなさいよ、恥ずかしいなぁ……もぅ!」
モスケが椅子をガッチャンガッチャン言わせてはしゃぐ。相変わらず元気が良いが、ヨウの言う通り、少し落ち着いたらどうなんだろうか、とも思う。
オカメは同じ宿に泊まっているので一応、毎日顔を合わせてはいたが、この二人は久しぶりに会った気がする。
かくいう俺も、この1週間で随分変わったと自負している。
大剣は相変わらず斬れないポンコツだが、俺自身の力が格段に上がったはずだ。
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「お待たせしました、ランク更新準備が整いましたので、刻印室へどうぞ。」
待合所でお茶を飲みながら待機していたところに、ギルド職員のミクが刻印室へと案内する。
刻印室とは、30cm四方の四角い機械が備えられている、あのチクッとする部屋だ。
「今回はGMCのデータをアップデートするだけですので、痛みはありませんから御安心を。」
こうして無事、俺はBランクに。モスケとヨウはCランクに。
そして、オカメは何とSランクに昇格する事が出来たのだった。
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「四人とも、急な特別カリキュラムを昇華して貰って感謝するよ。
それでは早速だが、君達に捜索隊として南西の原生林エリアの特別調査任務を依頼する。
先見隊として幾つかのパーティを既に派遣してあるから、後は現地で対応して欲しい。頼むよ、期待の新人達☆」
城門の外にて、ギルドマスターのコテツが見送りに来てくれている。
そして、その隣には俺達の指南をしてくれた聖騎士の3人と聖女が並び立っている。
「うむ、この1週間という短い期間ではあったが、君達は見違えるように強くなった!自信を持って頑張るといいぞ!
生憎、俺達は王国の傘下にある為に付き添う事は出来ないが、同行が出来ない代わりに俺達の戦い型を君達にそれぞれ伝えたつもりだ。
君達は俺達の代わりに冒険に勤しんでくれ!」
チコが親指を立ててニカッと笑う。
その横でサクラが控えめに手を振り、チクワが右拳を自分達に突きだして鼓舞してくれている。
「「「ありがとうございます!……師匠!!!行ってきます!!!」」」
調査は数日間の予定である為にそれなりの荷物が入ったバッグを各自背負い、南西に向けて広い草原を駆け出した。
「……いってらっしゃい、我が弟子達よ……。」
若き冒険者達の背中を見送る5人。
「君達には悪かったね、休暇中に手伝わせてしまって。」
コテツが4人に礼を告げる。
「いえ。俺達も良い経験になりましたわ。弟子を持つ師匠という気持ちは何か……良いもんですな、コテツ師匠?」
チコが無邪気な笑顔でコテツに言葉を返す。
「はは☆君は最初から規格外の才能と素質を持っていたから、オジサン大変だったんだぜぃ?……ま、そういうところも含めて師弟関係ってのは面白いんだけどね☆
とりあえず、仕事に戻るとするかな☆」
コテツ、チコ、サクラ、チクワの4人は城門内へと歩き出す。
ただ1人、ジッと見送った者達が駆けていった方を名残惜しそうに……眺め続けていた。
「……あっ、そうだ☆
実はあの若きパーティの中に勇者候補がいるんだけど、誰か都合良く勇者へ導いてくれる稀代の勇者がいないかなぁー。
国王に伺いたてなきゃだなぁー。」
コテツが足を止め、思い出したようにポツリと呟く。
「―――――ッッ!!!?」
モッチャンの肩がピクッと弾む。
チコがその小さな肩をポンポンと叩く。
その隣で、サクラが旅の道具が入ったバッグを差し出す。
「オチヨさんが用意してくれました。
あの子達を宜しく頼みます、聖女様……いえ、稀代の勇者様。」
「――――――はいっ!!!!」
モッチャンはバッグを受けとると、嬉しそうにハリー達の後を追いかけていくのであった。