《42..特別講師》
今日は俺、オカメ、モスケ、ヨウの四人は、揃って朝からギルドの待合所で待機している。先日、ギルドマスターに特別任務を依頼された四人である。
今回俺達はギルドマスターの特権で飛び級で冒険者ランクが引き上げられるというのだが、その為にはそのランクに見あった固定された実力が必要となる為、特殊カリキュラムを受けなければならないらしい。
そのランクに見あった実績を残していかなければ、降格する事だってあるのだ。
通常であれば、下位ランクから準じて実績を重ね、1つづつランクを上げていく訳で、その常識をねじ曲げて権限のみで飛び級となるのだから、その責任は重い。
「お待たせしました、ギルドマスターがお待ちですので、執務室へどうぞ。」
ギルド職員のミクさんに連れられ、執務室へ向かった。
「マスター、お連れしました!」
「はぃはーぃ、入ってくれたまへ」
――――ガチャ。
俺達四人は執務室へ入ると、ミクさんは退室していった。
「やぁ、諸君、おはよう☆」
「「「おはようございます!!マスター!!」」」
「うん、元気があってよろしい!
では、早速今日から特別カリキュラムを受けてもらおうと思う。
そこで、君達にはマンツーマンで特別講師を用意したよ☆」
特別講師?
授業みたいな指導を受けるのかな?
「君達は運が良かったね、今までの中でも過去最高の講師が集まってくれたよ☆
……ささ、入って来て!!」
――――ガチャ。
再び扉が開き、四人の特別講師が入室してきた。
「「「――――――っっ!!?」」」
俺達四人はその四人の顔を見て絶句した。
ここはギルドだよな?何でこの人達がここにいるんだ??
今、俺達の目の前には……
王国聖騎士団団長チコ
王国聖騎士団副団長チクワ
王国聖騎士団副団長サクラ
稀代の蒼の勇者モッチャン
……の、四人が立っていたのだ。……嘘でしょ?
いやいやいや……おかしいでしょ……何で俺達みたいな面子に、この国の最強クラスの面子持ってきちゃったの??? 死ぬか?死んだな?コレ
ダメだ、既にモスケとヨウが虫の息だ。
しかも、何か『勇者様』に至っては顔真っ赤にしてハァハァ言ってるし。
そもそもギルド所属さえしてないよねこの方々???
「だっはっは!やぁ、オカメーヌちゃん、ハリー君。昨日ぶりだな!」
あの時に言ってたまた逢おうと言ってたのは、この事だったのか……。俺はこめかみを押さえて溜め息をついた。
「チコさん、昨晩はおぉきにぃ。まさかギルドの中でお逢い出来るとは思てなかたわぁ。なぁなぁマスター、無理強いとかしたんちゃうん?」
流石はAクラス冒険者のオカメだ。この面子を前にしても、堂々としたものだ。
「ははっ、オカメちゃん。それはさっきも言った様に、君達は本当に運が良かったんだよね。彼らは確かにギルド関係者でも冒険者でも無いんだけど、たまたま彼等の非番と重なってね。まぁ、凱旋後の休暇だったんだけどさ、聞いたら手を貸してくれるって言ってくれたんだよ☆
これもオジサンの人脈ありき、といったところかなぁ☆」
「うむ、実は俺は、かつてコテツさんに弟子入りしていたんだ。その頃はまだコテツさんもオチヨさんも現役冒険者でな。当時のSランク冒険者の中でも群を抜いていたコンビだった。
今ではこうして聖騎士団とギルドという所属先こそ違うが、俺は未だにコテツさんにはいろいろと御世話になっているのだよ。」
と、チコはギルドマスターの横で胸を張る。
まさかギルドマスターと団長チコが繋がっていたとは。
ギルドマスターとオチヨさん、現役時代はSランク冒険者だったんだなぁ。
「団長、そう言いながら、いっつも飲んだくれて帰っていらっしゃるんだから…少しは自重して下さい。」
「……ぐっ!」
副団長サクラのジト目での厳しい指摘にチコが固まる。
「俺達は団長の行くところには何処へでもお供する。誠心誠意を持って指導に当たらせて頂くよ!」
副団長チクワが無駄に筋肉を強調させながら言う。
「わ、わわわ、わたくしはそのう、ふつつかものですがどうぞ宜しくお願い致しますわ!!」
「……姉ちゃん、嫁ぎにいくわけじゃないんだから……」
「と、とつ……!?……ばっ、バカな事いわないでぇ!!」
「―――――ふぎゃっ!!!」
モスケが物凄い勢いで突き飛ばされた。
「……という訳だから、早速カリキュラムに取りかかろうか☆」
こうして俺達の特別カリキュラムは始まったのだった。