《34..調査任務》
「えーと……3人とも、大丈夫かな?オジサン、申し訳なかったかなぁ。」
「そりゃあまぁ、普通は順をおってランクアップしていくんですもの、仕方ないわよねぇ。」
「にしししっ、3人とも、めっちゃおもろい顔しとたでww
久し振りに笑わしてもろたわww」
「……オカメちゃん、めっ!!」
「だって…ぷひひっww」
俺達はなんとか魂を引き戻したのだが、気がつくとオカメが大爆笑していた。
……ちくしょう。
「……えーっとね、今回君達を特例で昇格させたのには理由もちゃんとあるんだよ。昨日、君達がガルファングと交戦したエリアなんだけど、実はあそこにはガルファングクラスの魔獣が出現するはずが無かったんだよね。
あの辺りはちゃんとギルドで管理されているし、それを魔獣達も知能が高い高ランク魔獣程、危険を侵してまで我々の近くに現れる事は無いんだ。
だからこそあそこはFランク冒険者でも安全に活動出来ていた訳さ。
だけど、今回、いちゃいけない強力な魔獣が現れた。それはつまり……」
「……更に強力な魔獣に追われた……か、ですね。」
ヨウが険しい顔で応える。
「……その通り。さすが頭脳明晰な才女だ。
そう、考えられるのは、Bランク……あるいはAランク級の魔獣が奥地から這い出てきているのかもしれない。
今、うちからも冒険者達をユーミ神殿の復興に派遣していてね。人材が手薄なんだよ。とどのつまり、君達にやって貰いたいのは、南西原生林の調査任務を依頼したい。
オカメちゃん、モスケ君、ヨウ君、そして…ハリー君。俺っちから君達に特殊任務を依頼させて貰うよ☆」
……ユーミ神殿?
さっき確か…モスケはそこの正当後継者って言ってなかったっけ?
復興って……??
「……とは言っても、まだ昇格手続きが数日かかるから、それまでしっかり鍛えて貰うけどね☆カリキュラムは追って連絡させて貰うよ☆」
「「了解しました!!」」
「にひっ♪おもろなってきたな♪」
オカメが人の気も知らず、無邪気に笑った。
………トントン。
「マスター、失礼します。」
「はぃはぃ、入っていいよ☆」
ドアが開き、女性職員が1人入ってきて一礼すると、スッと姿勢を正す。
「王国聖騎士団がもうすぐ凱旋されますので、表参列御願いします!」
……王国聖騎士団??
さっきのユーミ神殿といい、全然話に付いていけてないな。
一度この世界について学ぶ必要がありそうだ。
「ふむ。報告ご苦労さん。よし、それじゃあ君達も一緒に行こうか。英雄達の凱旋パレードだ☆」
「うふふ、私も行っちゃお♪」
ギルドマスターは膝をポンと1つ叩くと、俺達新人3人を引き連れ部屋を後にする。その後ろをオカメとオチヨさんが楽しそうに雑談しながら付いてきていた。
端から見ると、仲の良い姉妹に見える。
「兄貴!!なんか朝からずっと緊張しまくりで……俺もうチビりそうっすよ」
こっちはこっちでヘンテコな弟分が出来てしまっている。
……ま、いっか。
表に出ると、表参道は既に御祭の様な盛り上がりだった。
街道の両脇には混雑する程の街人が溢れている。中には商売そっちのけで商人達も混じっていた。
「うわぁ、凄い人混みだぁ。これって街中の人達が全員出てきてるとか言わないよね?へぇ~、これが凱旋パレードかぁ。」
俺が田舎者感まるだしで不覚にも興奮してしまった。
小さい頃にネズミーランドに連れていって貰ったが、あの時に見たパレードを思い出される。
「そういえば、凱旋って……どこから帰ってきたんだろ?」
「それは……」
俺の独り言に反応したヨウが、チラッとモスケを見てから、説明してくれた。
「私達の故郷、ユーミ神殿です。」
「………え!?」
「一ヶ月前に壊滅的な状況に陥っていたところを救ってくださった……と聞いています。私とモスケは魔導学園での卒業手続きの関係で王都に来ていましたので私達は助かったのですけど……かなりの被害が出たという話です……。」
「えっと……何かゴメン……。」
「いえ、気にしないでください、幸い私達の家族は無事でしたし、聖騎士団の方々が助けて下さいましたから!!
―――――あっ、ほら、聖騎士団が来ましたよ!」
気まずくなりそうな所を、気を使ってくれたように話を切り替えてくれた。
一際声援が大きくなり、そのヨウが指し示す方に視線を移した。