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《24..ショッピング》

「まず装備屋に行って鞘を探そか。今のままやと、ずっと手に持ってなあかんでな。」


オカメは両手を後ろ手に組みながら隣を歩いている。

腰まで伸びた長い黒髪をサラサラと風に流し、きめ細かな白い肌を包む黒いゴスロリ風のドレスに薔薇意匠が映える。腰には漆黒の細身の長剣を携える。


()はゴスロリどころか女性らしい格好をした事が無かった。

ラフなシャツにラフなパンツ。

どちらかと言えば、ボーイッシュなスタイルだった私は、密かに女の子らしい格好をしてみたいという願望はあった。らしくないな…と、恥ずかしくて出来なかったけど…。


今となっては、ボーイッシュどころか、本当に男になったのも何の因果か。

この際、男の子としてのファッションを楽しんでみるのも悪くないな。




しばらく道なりに歩いていると、凄く良い匂いがしてきた。


スンスンスン…


獣人化して鼻が効くようになったのだろう、まだ割りと先の方に見えてきた屋台の香りが鼻を掠めていく。


グゥゥ~~……。


「えっ、あっ、いや、ちゃうねん、これはその……うぅ……」


オカメのお腹が鳴る。そう言えばもうとっくに昼を過ぎておやつの時間に差し掛かっている。

考えてみたら、転生初日にいろんな事があったな……。


「じゃあ、先に何か食べようか。実は俺もお腹ペコペコだったんだ。」


「にひっ♪食べよう食べよう♪ちょうど屋台もあるしな!!」


そういえば、チンチラって草食だけど、この国の獣人達って、何を食べてるんだろう?やっぱり牧草系かな?はたまた、人間と同じで肉や卵も食べるのかな…?


早速、両手いっぱいに屋台の食べ物を抱えてオカメが戻ってくる。


「……おまたせっ!!適当に買ってきたけど、良かたかな?あっちにベンチあるで、そこで食べよっ♪」


ベンチに二人並んで腰掛け、紙包みを開ける。



――――――前者だった。



盛り沢山のチモシークッキー(牧草菓子)に野菜スープ、大量の大豆の甘団子にアップルジュースだった。


しかし、覚悟を決めて口にしてみたところ、これがなかなか美味しいかった。

それもそうか、俺も()()()()()()()()()なんだから。

ふむ、味覚も大きく変化しているようだ。



「さて、お腹も膨れたし、装備屋目指してレッツゴー!!」


「にひひっ、急にご機嫌なったなぁハリー」


「おぅ!!めちゃくちゃ美味いおやつを買ってきてくれてありがとうな!!一気に疲れが吹き飛んだ気がするよ。」


俺は両腕でガッツポーズをきめる。

お?少し二の腕に力こぶ出来たぞ?自分で言うのも何だけど悪くないな。


「それは良かた。美味しいもんにはアタシも目がないし、食べる事ならまかしときぃ♪」


「助かる。期待しとくよ。」


食べた後始末をすると、再び装備屋を目指し、歩き始める。



10分くらい坂道を歩いたところに、装備屋の看板が見えてきた。

店頭から店内にかけて、武器や防具、鎧なんかが綺麗に陳列されている。

店内も数組の冒険者らしき者達が買い物に来ているようだ。


「へい、らっしゃい。何かお探しで?」


店主が話しかけてきたので、これに合うちょうど良い鞘が無いか……と、持っている大剣を見せる。


「……ほぅ……これはなかなか珍しいデザインですな……。合う商品があれば良いのですが……そうだ、もしお急ぎでなければ採寸させて頂いて、オーダー製作も出来ますよ?あぁ、勿論その場合、それなりの()()がかかってきますが……」


と、親指と人差し指で丸く円を作る。様は予算が嵩むというわけだ。オーダー製作ならば当然だろう、俺はオカメに目配せして合図を送る。 


「構へんで、お金はあるからオーダーしたってくれる?」


「ありがとうございます!お支払いは仕上がりの際で構いませんので、まずそちらの大剣の採寸をさせて頂きたいので一旦お預かりしても宜しいでしょうか?」


「いいですよ。どうぞ。」


俺は大剣を店主に手渡す。……店主よ、変な事考えるなよ?


「ほな、ちょうど2件先が洋服屋みたいやで、採寸終わるまで行ってみぃひん?」


「そうだな。このまま待ってても仕方ないし、行ってみようか。じゃ、そういう事で、頼むね店主。」


「了解致しました。30分もあれば採寸出来ると思いますので、その頃またいらして下さい。」


俺とオカメは会釈すると店を出た。




(なぁコアラ、あの剣を預けちゃったけど良かったのかな?あのまま奪われたり盗まれたりしないかな)


ひそひそ声で首筋のコアラに語りかける。


《お?なんだ、またオイラの事を忘れてるのかと思ってたぜ?さっきクッキーくれなかったしさぁ…ぶつぶつ》


(ゴメンて、オカメいるから話しかけられなかったんだよ。ほら、残りのクッキー)


《ん?何言ってんだ、あの娘はもうオイラを見てるじゃないか。あの洞窟で》


そうだったっけ?あの時、俺、毒で気絶してたし。


「ホンマやで?あの洞窟からアンタをゴム玉が運んで出てきてるとこ見てたんやから。」


「おわっ、びっくりした!!何だ、オカメ聞いてたのかよ……」


《おい!!誰がゴム玉だ!!…何だなんだ、オイラこれ、いじられポジションなのか!!?ダメダメ的なマスコットポジションなのか!!??》


二人揃って大きく頷く。だってそうだろ、実際。

マスコットかどうかは知らんけど。


《……ったく。あの剣を預けたところでどうともならないと思うぞ?まぁ見てな。そのまま歩いて遠ざかってみな?……ぽりぽり……うっま!!これ、うっま!!!!》


クッキーを頬張るコアラの助言に首を傾げながら2件先の洋服屋に向かい始めた時、装備屋から悲鳴が聞こえてきた。



「ぐあぁぁぁっ、急に重くなったぞこの剣――――!!!!!!いや、重っ!!!!どんどん重たく…ぐぇぇぇぇっ!!!!」


ガタァァァン!!!


「おやっさぁぁぁん!!!おぃ、皆手伝え!!!!ぐっは、クソ重てぇ、何じゃこりゃぁぁぁぁ!!!!」



な?……とばかりに、どや顔で俺の顔を見上げるコアラに何かムカついた。


どうやら所持者と大剣の距離が離れる程、まるで意思があるかの様に大剣が重くなるようだ。


ゴメンな、店主……。




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