《18..素材とオカメ》
日も沈みかけた頃―――。
「おっちゃん!!!!おるかぁぁぁ――――!!!!」
ドカァァァン!!!!
ガタ―――ン!!ガシャガシャ――――ン!!!
「うぉっ!?」
突然のドアを蹴り開ける音と診察室からのけたたましい音に診察ベッドの俺は飛び起きた。
何だ何だ何だ!?
「オカメこのやろう!!!静かに入れと何度も言っとるだろ――――!!!!」
診察室から院長オジジの怒号が飛ぶ。
どうやら素材をあの洞窟に引き取りに行っていたオカメが戻ってきたみたいだ。
「おっちゃん、堪忍や!!そんな事より、ハリーは!?ハリーはおるやろな!!?」
「……ちっ、何だ何だ騒々しい。小僧ならそっちで寝てるから静かにし―――」
ドン!!
オカメはオジジが言い終わる前に突飛ばし、俺の診察ベッドへ駆け付けてきた。
「なななな!?どうしたんだ、オカメ!!?」
オカメは切羽詰まったような顔を俺の顔に寄せ、胸ぐらを掴む。
「ア……アンタ……ホンマに……」
「……ん?」
俺、何かやらかしたっけ?
「ホンマにあの大蛇を倒したん……!!!?」
「……え?」
俺はただオカメのただならぬ剣幕に圧され、無言で何度も頷く。
「あれ、ただの大蛇ちゃう……あれはアタシでも倒せるか倒せないかの高ランク魔獣『ウロボロス』や!!!その『ウロボロス』の首が綺麗に飛んどるねん!!!
あんな化け物倒すなんて……アンタほんまに何者なん!!!?」
「何!?『ウロボロス』だと!!?あれはAランク魔獣で、Aランク冒険者でもパーティーを組んで挑む難敵だぞ!!!?それを小僧が倒したってのか!!!?」
オカメの声に院長オジジが反応する。
あれ、確かに死を意識する程強くて怖かったけど……そんなに強い魔獣だったの!!!?
……でもアレをぶった斬ったのは、あの剣のお陰なんだよな…。
何故か今は小枝1つ斬れないナマクラになってるけど(王都に来る前に試したのだが枝1つ斬れなかった)
「えーっと……確かにアレを(剣が)倒しましたけど……」
「「「ええぇ―――――――!!!!!」」」
看護師の二人も合わせて驚愕している。
「ただ、ただですね、あれはたまたま………」
勘違いされたままだと色々マズイ。だって俺、激弱のド素人だし。そう思って弁明しようとするのだが――――
「アンタ、まだどこにもギルド所属してないんやろ!? 絶対冒険者に向いてるて!! な?な?善は急げや!!ギルド新規登録申請いこ!!?」
「ちょっ、ちょっと待って、ギルドって!!!?」
「えぇから、えぇから!!ほら、行くで!!おっちゃん、またな―――!!!」
「……は!!?いや、ちょ、待て、待てって!!お―――――い!!!!」
オジジが呼び止めようとするが、気にする素振りもなく、脇で寝ているコアラの鼻を掴み、俺を無理やりズルズルと引き摺っていくオカメ。
魂の抜けた様な院長オジジがポツリと呟く。
「………ケセランちゃん………アイツの診察料……トイチでツケといて」