《12..王国聖騎士団の交戦》
「なぜ彼がここにいる!?王都からにしては、あまりにも早すぎる!!」
タイサは困惑する。それもそのはず、使いに出した我が娘でさえ、時間的に未だに王都にさえ到達していないはずなのだ。
「第二騎士隊は右舷、第三騎士隊は左舷より展開!!目標の足を総攻撃!!
第四騎士隊は正面後方よりシールドを展開!!!黒炎を抑えろ!!!
第一騎士隊は正面より一点突破!!!一歩たりともそれ以上の進撃を許すな!!
今こそ我らの不屈の騎士道精神をここに示す時だ!!!」
副団長の1人、チクワ・ミツナーが手にする大剣を高々と掲げ、そして……
「剣を構えよ!!!―――――――――突撃!!!!!」
その切っ先を『侵略の悪魔』に指し示すと、突撃の号令をかける。
「「「オオォォォォォォ―――――――――!!!!!」」」
騎士団の聖騎士達が一斉に突撃を開始する。
ズシン…
ズシン… ドゴォォォォォンンン……
重い一撃が、束になって『侵略の悪魔』を攻め立てていく。
流石は王国が誇る聖騎士団。精鋭中の精鋭が揃った最強の騎士団とも言われている事もあり、あの『侵略の悪魔』が進撃を完全に抑えられている。何より、あの最強の男、チコの攻撃が尋常ではないのである。
「大神官タイサ殿、お怪我は??」
チクワがタイサに歩みより、右手を胸に当て、軽く会釈したあと、声をかける。
彼もまたチコを凌ぐ大きな体躯をした巨漢の騎士。実質、団長チコの右腕である彼は、その巨体を活かし、巨大な大剣を片手で奮う重騎士である。
「あ…あぁ、忝ない。援軍、心より感謝する。…しかし、この短時間でいったいどうやって……?」
「あぁ、それはですな。我々は別の任務で王国の北東にある国境の関所へ王族の1人を護衛し、送り届ける様に派遣されていましてな。その任務を完了して、その帰路の途中、此方から黒炎と煙が上がっているのが見えたのです。
その規模から、大火災が起きているのではないかと進路を此方へ変えようとしたところでバッタリと貴殿の御令嬢、聖女様に遭遇し、事の一連を伺ったのです。」
「おぉ…そうだったのか!不幸中の幸い…という事か…」
タイサは胸を撫で下ろす。
「…して、我が娘は?」
「はっ、聖女様はそのまま事の次第を伝える為、数名の我らの同士を護衛につけ、王都へと向かわれました。」
「そうか…無事なのだな…。これで伝令は届く……」
「……しかしながら、まだ予断は許されませんぞ……!!アレは…今まで出会った事が無いほどの脅威……
今はまだ、ギリギリ持ちこたえておりますが――――むっ!!?」
――――――ドゴォォォォォン……!!!!
何かが勢いよく飛んできたかと思うと、二人のすぐ側で地面が破ぜる。
「―――アイタタタ……ちと油断した!!!だっはっはっは!!!」
最強の男、チコだ。
彼はクレーターの様になった地面から這い出すと、
「こりゃぁ、ちと分が悪いかもしれないなぁ。あと1つ、決定打が足りない。このままではジリ貧だぞ。
さて、どうすっかなぁ。
………って、おぉ??タイサさん!!こんな所にいたのか!!…それに、チクワまで!!だっはっはっは!!!
すまん、倒せないわアイツ」
――――と、とんでもない事を、さらっと口にするのだった。