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「いいんですか?」
そう云いつつも顔のにやにやが抑えられない。ハーバラムさんはにっこりする。
「紙とインクの棚には近寄らないようにね。弾き飛ばされて怪我するよ」
「はいっ」
商談が済んだら迎えに来てくれるらしい。そのあとはこの辺でなにか食べよう、と約束した。
うきうきしたあしどりで、表へ向かう。
相変わらずにぎわいがすごいが、ひとが群がっているのは紙やインク、ノートの棚のまわりだけ。肝腎の本棚の前は閑散としていた。
表から店内へ這入る。本棚は向かって左。紙やインクを血眼になって手にいれようとしているひと達を避け、本棚の前まで辿り着いた。
色々ある。ハードカバーがほとんどだが、ぺらっとした和綴じもあった。手にとっていいものなのかな?
迷ったが、店員さんは居ないし、触るなとも書いていない。一冊抜き取ってみた。
開く。小説……かな。紙は厚口。画用紙のもっと丈夫なやつみたいな。
値段はどこに書いてあるのだろう。きょろきょろする。
「あ」
棚に書いてある。この棚のは一冊……銀貨8枚。
高!
いや、だって、宿賃が一泊一食付きで銀貨29枚でしょ? おじさんの旅館は一泊二食付きで二万円だった。銀貨29枚がそれと同等とは云わないが(情勢とか環境とか違うのだし)、だとしても本一冊で銀貨8枚!
揚げパン何個分だろう。銀貨1枚あれば、お腹いっぱい食べてもうんざりするくらい残る程買える筈。
そうかあ、ナジさん家にあった本、かなり古かったし、大切に大切に読んできたんだろうな。ダストくんも本好きっぽいから、勉強の為にって買ってあげてたのかも。
揚げパン……とたそがれていたら、話しかけられた。
「あのう」
びくつく。「はい」
左を向くと、綺麗な女の子……じゃない、男の子が居た。
プラチナブロンドっていうのかな? 淡い金色の髪。長さは身長くらいあるのじゃなかろうか。
それを、左へ寄せて、ゆるく三つ編みにしている。ボリュームが凄い。金のまつげがばっさばさの垂れ目で、瞳は上等な紅茶みたいな茶色。肌は桃の果肉色だ。
身長は170cmくらい。ちょっとふっくらしている。
服装は、シャツ(ぼたんでなく紐で留めている)、ベスト、麻のローブ、ごわごわした生地で脚にフィットしたずぼん、ショートブーツ。
裾野のひとっぽくはない。何故って、髪飾りもピアスもなにひとつつけていないのだ。
主要キャラその2です




