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メーデさんは無造作に貝貨を掴みだし、カウンタの上へ置いて数える。
「よし、こんなものだな。チダメグサの値だが、貝貨15枚ってとこでどうだ?」
……。
ば、馬車三台買える! そんなに価値あるの?!
ハーバラムさんが溜め息を吐いた。
「摘みたてだとそんなにするんだね!」
「ああ。しかも、普通だったら町の外の、まともな設備もないところで加工しなきゃならない。それをここでやれた。薬の出来は間違いなくいいし、高く売れる。なら、材料を採ってきてくれた者にも分け前はやらにゃ」
メーデさんがそう云い、サローちゃんが深く頷いた。「だからまたうちへ売りに来て。薬の可能性がひろがる」
どうもサローちゃんはお薬おたくらしいな。曖昧に笑って誤魔化しておいた。
商談はすぐにまとまった。貝貨15枚を六等分かあ……貝貨1で、銀貨228だから……。
「マオ、聴いてる?」
「へ?」
「あのね。普通は、あの量で精々貝貨3枚、よくて4枚なんだってば」
へー、普通でも高いんだ。
重たいので本を収納空間へ仕舞った。「高いですね」
「だから。上乗せ分はマオのおかげだろ? マオがとっときな」
はい?
ハーバラムさんは指折り数える。
「貝貨4枚だったとして、六人だから銀貨で152枚づつだね。マオの取り分は貝貨11枚と銀貨152枚!ね?」
「えっ」
「少ないかい?」
「すくなくないです」
「じゃ、それでいいね」
ハーバラムさんがカウンタから貝貨を4枚とり、銀貨をじゃらっと置いた。同意したとみなされたようだ。
どうしたらいいのかよく解らなかったので、お金は受け取った。
メーデさん達へさようならを云って外へ出る。ハーバラムさんが耳打ちしてきた。「マオ、時間停滞のことは内証にしといたほうがいいよ。利用しようとするやつがいるからね」
はっとした。
そうか。イルクさん達も、チダメグサのことは知っているようだった。相場も解るだろう。それよりはるかに高値で売れたとなったら、時間停滞のことがばれる。
ハーバラムさんは悪用されないか心配してくれているが、めずらしい特殊能力があるとばれたら、傷薬への疑いが再燃するかもしれない。口は噤んでおこう。
「あの……」
「なんだい?」
「だいじょうぶですかね」
ちらっと後ろを振り返った。
ハーバラムさんはにこっとする。
「心配ないよ。むしろあのふたりはマオのことを隠そうとする」




