表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
買いものに行ったら帰り道が異世界につながっていた
9/6660

9

 

 馬車から少し離れたところに、小太りのおじさんが、たらいを手に待ってくれていた。ダストくんが云う。

「ヤームさん。水担当」

「やあ坊ちゃん、砂で辟易してたろう。目が真っ赤だ。湧水」

 ヤームさんはにこにこしていて、たらいに水を溜めてくれた。

 ?

 今ヤームさんが何もないところから水を出した。

 ……魔法?

 魔法だあすげー。水出てきた! 水芸? 水芸?

 感動に黙り込む。ヤームさんが笑った。「魔法がめずらしい?」

「えと。はい」

「そうかそうか。ままま、顔を洗ってしまいなさい。ダスト、タオルを」

「解った」

 ダストくんが居なくなった。ヤームさんはたらいを持ってくれていて、そのまま顔を洗う。目が大分痛くなくなった。

 戻ってきたダストくんからタオルをもらって顔を拭く。水は、別に変なところのない、寧ろ綺麗な水だ。

 ヤームさんが、軽く会釈してからどこかへ行った。「どこへいったの?」

「水が勿体ないだろ。トゥアフェーノに飲ますんだ」

「とあふえの?」

 ダストくんがふきだして笑った。くっ、舌足らずで悪かったな。

 大きい馬車へ移動する。トゥアフェーノ=馬車を引いてくれている動物。正しくは「馬車」でなく「トゥアフェーノ車」だったのか。わかりやすく翻訳されている、と。

 回り込んでみて、解った。大きいとかげ。イグアナみたいの。ずんぐりしてて、後ろ肢で立っている。目がきょろきょろしてて可愛かった。

 大きい馬車へはいる。多分、さっきまで乗っていたのは荷物用、こっちはひと用。金属製のマグが紐に通してぶら下げてあったり、ハーブ類を束ねたものが柱へ括りつけてあったり、下には絨毯も敷いてある。

 ダストくんが衣装箱をひっかきまわし、自分の服を貸してくれた。上から着ればいいよと、袖が太くて丈の長い、前開きの白い服を渡される。綿かな。袖を通して、腰のところをきらきらしたベルトで結ぶ。金襴みたいなベルトだ。

 あと、ごわごわしたマント。それと、靴は変えたほうがいいといわれ、そうした。実際スニーカは至極歩き辛かったのだ。ブーツを渡されたのではきかえる。ぴったりだった。ダストくんがくすくすしているから何かと思えば、ナジさんの予備のブーツらしい。笑ってやるなよ少年(高身長)。

 スニーカは、収納空間行きだ。矢張りめずらしくはないスキルらしく、ダストくんは、マオもかーとしか云わない。

「なあ、マオってさ」

「うん?」

「東から来たの」

 異世界からだねとは云えず、ダストくんの目を見てわかんないと答えた。頭をぽんぽんされる。「そっか。大変だったな。あ、これもあげるよ、俺の」

 髪にピンをさしてくれた。針金みたいな金色のきらきらに、不透明な、小さくて丸い石がくっついている。はとむぎみたい。

「多分、次は飯かな。沢山食べて大きくならないとなマオ」

「もう大きくならないよ」

 連れ立って外へ出る。ダストくんが肩越しにこちらを見た。「親が小さいのか」

「だってもう大人だもの。二十四歳」

「ははは、本当は幾つなんだ?」

「だから、にじゅうよんさい」

 ダストくんが足を停めた。ぶつかる。「痛い」

「じゅうよん?」

「え? いや、にじゅうよん」

 大笑いされた。何故。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ