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85

 

 おじいさんがにこにこして頷いたのと同時に、ダストくんが泡をくって外へと逃げていった。

 ??

「ありゃ」ハーバラムさんがちらっとそれを見て、申し訳なげにおじいさんへ云う。「ごめんね」

「ははは、慣れておるよ。おじょうちゃ……ぼっちゃんは平気かね?」

 首を傾げた。

「……あ」

 おじいさん、睨みつけてくる女の子、と交互に見て、漸くと解った。ふたりは、髪の間から、毛のふさふさした猫耳が覗いている。ダストくんは猫をこわがるのだ。


 おじいさん=メーデさんは、奥のアーチの向こうへなにやら声を掛けた。どうも、お弟子さんが作業中らしい。「蒸籠を用意しろ。チダメグサだ」

 蒸籠? むすのかな。

 きょとんとしていると、ハーバラムさんが教えてくれた。

「あの草は、むして乾かしとくと、生に近い効能が保てるんだって。わたしは技術がないからできないけどね」

「はー、なるほど。じゃあ生ではつかわないんですか?」

「つかう」

 思わぬ方向から答えがきた。

 女の子だ。ハーバラムさんがにっこりする。

「メーデのお孫さんだよ。シャルちゃんだっけ?」

「サロー。チダメグサは摘みたてしか生ではつかえない。だからわたし達は外で調剤するの」

「へえ。枝豆みたい」

 エダマメ? とハーバラムさんが首を傾げた。枝豆はないのだろうか、この世界。

「お湯を沸かしといてから畑にとりに行って、とれたてをゆがいて食べるものです」

「おいしいの?」

「そりゃもう」

 メーデさんがこちらを振り向いた。サローちゃんが無言ではかりを用意する。上皿天秤だった。

「幾ら綺麗どころが揃って持ってきたと云え、色はつけないぞ」

「メーデったら、いっつもこうなんだよ。マオ、無視していいからね」

 ハーバラムさんがくすくすすると、メーデさんはいたずらが成功したみたいに嬉しそうに笑った。

 サローちゃんが天秤をセットし終えた。「じいちゃん」

「おお。じゃ、品物を見せてもらおうか?」

「マオ、こっちへ出しておくれ」

 カウンタへ近付く。カウンタの上にはメーデさんが油紙を敷いていた。ハーバラムさんがそこを示しているので、収納空間の口を油紙の上でさかしまに開く。

 チダメグサを出そうと思ったら、ばさばさと落ちてきた。さかしまに口を開いても、勝手に中身がこぼれ出たりはしないらしい。便利。

 チダメグサは結構な量で、カウンタへ積み重なった。これでいくらくらいなのかな?

 銀貨何枚かになればいいなとのんきに考えていると、メーデさんが喚いた。

「こりゃいかん! もとに戻してくれ!」


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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