797
ツィークくんは、ほか数名の傭兵と一緒に、俺を四月の雨亭まで送ってくれるそうだ。ありがたくうける。流石に消耗していて、ひとりでふらふらうろつきたくはない。
私兵や、ウロア達、ウロアのお友達などは、いったん警邏隊詰め所へひったてていって、人攫いへの関与が疑わしい者や、それ以外の犯罪に関連しているらしい者は留め置き、残りは帰す。「この感じだと、全員留め置くことになりそうですけどね」
外に出る。日差しがまだ残っていた。夕方みたいだ。
「俺にそんな話してもいいの?」
「決闘立会人が認めた書類を見ましたからね。今はマオさんの商会でしょ?その従業員のことですから、伝えるべきだと判断しました」
「マオさあん!」
大声を上げながら、マルロさんが走ってきた。「大丈夫です?!」
「マルロさん。俺ならぴんぴんしれますよ」
油断した。聴かなかったことにしてくれないかな。
マルロさんは半泣きで、俺の手をとってぶんぶん振った。
「よかったですう。マルロ、母さまから聴いて、急いで来たですよ」
「かあさま?」
「マルロ、仮眠とってたです。起きたら、マオさんがさらわれたって、母さまに聴いたです」
ツィークくんが付け足した。「マルロさんのお母さまは、副協会長ですよ」
「えっ!」
例の、実は強くて、よくぶっ倒れるという、あの?……黄色い髪だって、メイラさんが云ってたっけ。
マルロさんはぱっと口を覆った。
「また失敗しちゃった、ですう。母さまじゃなくって、副協会長さん、でした。ツィーク、ランティーズ、ヴァッセ、レミアン、内証にしてて、です」
「解ってますよ」
指を組んでお願いするマルロさんに、ツィークくんが苦笑した。ほかの傭兵も、笑顔で頷く。
マルロさんも護衛に加わって、四月の雨亭へ向かった。一度振り向いてみて吃驚した。旧トーリュス邸だ。そっかあ、ここもラッツァクの所有だもんな。
結構な数の警邏隊や傭兵がうろついているし、ものものしい雰囲気だが、野次馬はなかった。まだまだ還元過多による魔物の襲撃の記憶は新しい。ある程度戦える職業や特殊能力、もしくは高い能力値でないと、夕方以降は出歩きたくはなかろう。
お菓子の包みを配ると、五人は喜んでくれた。ツィークくんもおなかがすいていたそうで、早速ショートブレッドを食べている。マルロさんは、ライティエさんを怒らせちゃうですう、と云いながら、瞬く間にショートブレッドをおなかのなかに納めていた。
そういえば、今日はどうしたんだろう、四月の雨亭。俺がいなくても、サッディレくんはスープをつくれるし、ツァリアスさんはクッキーを焼ける。ハムエッグくらいならみんなつくれるだろうから、なんとかなっているとは思うけれど。




