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ジーナちゃんは表情を少しだけ明るくした。ミューくんは苦笑する。「ああ。随分、君をおどかしてしまったからね。恢復魔法をかけに行くよ」
「……気にしなくていいのに」
「そんな訳にはいかないさ。それに、心配だからね」
ジーナちゃんはすっと目を伏せて、ありがとう、と云い、侍女達と出て行く。
ミューくんは笑顔でそれを見送ったが、ジーナちゃんが見えなくなると表情をなくした。
ミューくんの心配は、なんとなく解る。ジーナちゃんは一回さらわれてしまったから、そのことがどこにどう響くか解らない。ミューくんの両親が、そのことを理由に、婚約を解消したがる可能性もある。対抗馬のマイファレット家が潰れそうだから、大丈夫かもしれないけれど。
……そういえばさっき、グークマがどうこうって、誰かが云ってなかった?きき流しちゃってたけどグークマ家も人攫いに関わってたのか?
「マオさん」
「うん」
「ジーナ、もしかしたらもうそちらには行けないかもしれません」
「うん。解ってる」
ミューくんを見る。ミューくんはこちらを見ない。「ごめん。俺が逃げ遅れたから」
「いえ。マイファレットの所為ですよ。人攫いなんて愚かなことをしているとは思わなかった。解っていたら、アエッラに関わったりしなかったのに」
ミューくんは本当に悔しそうだった。
グエンくんが、リーニくんに支えられて戻ってきた。ミューくんが恢復魔法をかける。俺はクッキーの包みをリーニくんとミューくんにに持たせた。グエンくんには、パンとお菓子の詰まったかごを押しつける。「これ持って帰って」
「でも」
「いいから。ご家族で食べて。きのこのパンは、冷めるとおいしくないから、できたらあたためなおしてね」
家政系職業のひとが居たらできる筈だ。
グエンくんは目に涙をためている。「ありがと……僕、マオのこと騙してたのに……」
「いいよ。俺も、色々隠してたし。グエンくんは精一杯頑張ったよ」
文字通り体を張って稼ぎ、妹の病気を治そうとしていたのだ。俺はそれを非難できない。人身売買やら売春の強要やらは、グエンくんは知らなかったのだろうし。
「グエン!」叫びながら駈けこんできたのはイルクさんだ。「無事か?!」
イルクさんはグエンくんを見付けると駈け寄ってきて、両手で顔を挟んだ。面差しがうっすら似ている。でも、それよりも、目の瞠りかたとか、首を傾げる角度とか、そういう動作がそっくりだった。
リーニくんがグエンくんの手からかごを奪い取る。
「お前は、だからあれだけ、僕が稼ぐから娼妓はやめろって……」
「兄さんもしてたことだろ」
「僕は賭場に出入りしたりしなかった」
え、イルクさんってもと・娼妓なの?まじで?
イルクさんは弟の頭をぺちんとはたく。「心配した。寿命が縮んだぞ」
そう云って、グエンくんを抱きしめる。リーニくんのアシストはやっぱり凄いのだった。




