792
リーニくんとグエンくんが来て、俺はさっと立ち上がる。「ありがと、リーニくん」
「ううん。マオ、賭場に通ってた目的って、これだったの?耳持ちを助けること」
「んー、半々かな」
頭を振った。苦笑で続ける。「それと、今勤めてる宿の為。ラッツァクに、お金借りてるんだ。莫大な金額をね。そっちを帳消しにできただけでもありがたいや」
リーニくんは、にっこりした。
「そっか、大変だもんな。折角雇ってもらえたのに、そこが潰れたらやだよな。……財産、処分しちゃうんだって?」
「うん。できる限り、保証とか補填にまわすつもり」
「ほしょう?ほてん?」
「ん。耳持ちのひと達におわびと、さらわれた娘さん達にも幾らか渡さなきゃ。家族の許へ返すのは、警邏隊に任せておいたらいいのかな」
「……ほんと、マオらしい。安心したよ」
リーニくんは俺の肩を抱く。「勿論、祇畏士さまが本命だよね?」
それには、俺は無言を貫いた。
グエンくんが低声で俺に礼を云って、ぱっと走り出ていった。リーニくんが苦笑いする。
「様子見ておくよ。間者をやってたの、気にしてるみたいだからさ」
「気にしなくていいのに」
くすっとして、リーニくんはグエンくんを追った。
「マオさん」
サキくんがやってきた。早々に聴取が済んだようだ。
「サキくん、ごめんね、大事になっちゃって」
「いえ、自分で選んでやったことです。……ジーナもマオさんも助けられて、よかった」
サキくんは気持ちのこもった声でそういった。やっぱり、ジーナちゃんを……。
俺がにこっとすると、サキくんもそうした。
「うちの者も、迎えに来るみたいです。怒られてしまうな」
「うーん、俺、説明しようか?まきこんじゃったって」
サキくんはくすくすして、俺の腕を軽く叩く。「マオさん、だめですよ、そんなに優しくしちゃ。僕、いいやつじゃありませんから、マオさんに全部なすりつけるかもしれない」
「サキくんはそんなことしないよ」俺は苦笑した。「それに、もしそうなっても、俺は文句いえないたちばだし」
「そんなことないです。悪いのは、人攫いだの、人身売買だのをしていたひと達です」
「それはそうかもしれないけど」
「そうなんですってば。……あと、いいこともあったので」
サキくんは目を伏せて、声を低めた。
「例のひとと、お近付きになれましたから。……こんなこと云ったら不謹慎ですね」
「そんなこと……」
「まあ、望みが薄いのも解ってしまったんですけれど」
首を傾げる俺に、サキくんは目でなにか示した。
そちらを向く。怪我をしているらしい傭兵を治療する、ミューくんが居た。サキくんは少しだけ、哀しそうだ。「ミューはとてもいいやつだし、優秀ですね。歯が立ちそうにありません」




