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まちの反対側の出入り口で傭兵たちと落ち合った。
門衛に通り一遍の質問をされ、許可が出たのでまちから出る。荷物が増えたので、イルクさんとエイマベルさんは荷台へ乗らない。
エイマベルさんは御者台、イルクさんは徒歩でついてくる。
一応それなりの速度は出ているのだが、イルクさんは特殊能力のおかげで足がはやいのだそうだ。なにそれチート?
走るだけなら結構長いこと保つらしい。でも、さほどめずらしい特殊能力ではない。まじかよ。
お昼ご飯は馬車のなかで食べた。
ハーバラムさんに渡されていた包みを開くと、にぎりめしみたいなのがはいっていた。まん丸い。ぱさっとした細長いお米で、塩で炊きこんでいるらしい。それに、おかずの干し魚。あとはお水。
馬車はノンストップで夕方まで走り、次のまち……村へ着く。
宿がひとつしかない小さな村だった。ただ、土壁は立派だ。
もう、レントへはかなり近いらしい。この村はレントのひと達が食べる野菜をつくっている、農村だ。
ダストくんがマントを脱いでしまいこんだ。真似する。この村のひとは、誰もマントを着ていないらしかった。
宿では晩御飯を食べてすぐに眠った。重曹でふくらましたパンと、野菜たっぷりのスープ、スパイシーな山羊肉のステーキという献立で、おなかいっぱいでしあわせな眠りだった。
次の日は朝はやくに村を出た。宿で朝ご飯を食べ、お昼用にサンドウィッチを幾つかこしらえてもらって。
お昼前くらいに停まった。
「ダスト坊、マオ、手伝っておくれー」
ハーバラムさんの声に、馬車を降りる。
川べりだった。うっすら紫がかった赤い草が沢山生えている。これって、ドールさんのお薬の材料だ。ナジさん家で、梁から吊るしてあった。風邪薬につかってた筈。
ハーバラムさんの説明によると、赤い草は薬の材料で、生に近いもののほうが薬のできがよくなる。で、こんなふうに群生しているのはめずらしい。摘んでいってレントで売れば儲かる。
まちから離れたところだから勝手に採ってかまわないらしい。ダストくんが袖まくりしてやる気だ。
傭兵三人も一緒になって、八割くらい摘みとった。場所がないらしいので収納空間で預かる。ハーバラムさんは、売り上げは六等分だね! と元気がいい。
川で手を洗って、お昼ご飯のサンドウィッチを食べ(具は山羊肉の焼いたのに、フルーツの香りがする甘辛いソースがかかってるやつ)、荷台へ戻る。
うとうとしていた。
「マオ」
ハーバラムさんの声に目を開ける。
「レントへ着いたよ。おりといで」




