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「?!」
びくっとしてダストくんへ体をくっつける。ダストくんはからから笑った。「大丈夫だよ、あれは大人しい。魔にとりつかれなきゃいいやつらなんだ」
「ま」
「魔だよ。つかれると大きくなって悪さする」
は?
いやもう充分大きいわ。ちょっとした大根くらいあるもの。ナジさん普通に拾って袋に突っ込んでるけどさっきのやつの子どもじゃないのそれ。
しかめ面が面白いのか、ダストくんはにやにやしている。睨みつけると笑われた。
ナジさんが息子の頭を強めにはたいた。「いってえ」
「ばかもの。すまんな、マオ。この子は分別というものがないんだ。謝りなさいダスト」
「……ごめんよ。でもさあ、普通知ってるだろう?」
ダストくんはもう一度ぺちんとはたかれている。お父さんのもとに辿り着いてから、言動が幼い。
ナジさんが外を示した。「マオ、顔を洗いたいだろう。それに、服もかえたほうがいい。外で顔を洗って、一番大きい馬車で着替えだ」
なんだかいろいろと進行している。でも、顔を洗いたいので、はいと返事して外へ向かった。
吃驚した。四人、馬車のすぐ外で、どうやら聞き耳を立てていたらしい。ナジさんが怒鳴る。「悪がきども、げんこつと飯抜きとどっちだ?」
「ナジ長老、客人の様子が気になるのは仕方ないでしょう」
高校生くらいの子達のよう。口々にナジさんへ抗議するが、一発づつはたかれていた。ほんとにげんこつでいかない辺り優しい。
最初にナジさんへ抗議した子が、もそもそ喋った。
「ダストがかわいい子を連れて帰ったって……」
「荒れ地の向こうから来たの?」
みんな背が高いなあと思いながら、口半開きで見上げていると、ひとりが話し掛けてきた。赤いビーズを沢山編み込んだ髪の毛がゆらゆらする。「ずっと東から? ねえ名前は?いくつ?」
「客人をもてなす、というのは、質問責めにすることじゃないぞ」
ナジさんが重々しくいって、ダストくんへ短く指示した。「連れてってやれ」
ダストくんに引っ張られて歩く。男の子達はお説教されることになったらしい。ナジさんがぺしぺしはたいていた。ナジさんは割と小さいので、男の子たちは多分ノーダメージ。
「あのこたちは?」
「うちであずかってる。見習い」
丁稚さんか。