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食事が終わり、部屋へ行った。ベッドと洗面台に、書き物机もついてる。都会に近い程調度も充実してくるのだなあ。
ちょっと心配になってトイレへ行ってみるが、タンクはついていた。ほっとする。
タンク、と云っても、トイレの傍に大き目の水槽みたいなのがあって、手桶をつかって水を汲み、流すのだ。水洗なだけありがたい。……水を魔法で出せたら便利なんだろう。
寝る準備をしてベッドへ寝ころんだ。
考えてみれば、井へ行ったのはよかった。収納空間に、制限なしなんて文言がついているのを見られたから。
多分、沢山はいる、みたいなことだろう。制限なしだから、文字通りどれだけでもはいる?
それはないかあ。
でも、多分普通よりは沢山はいるな。イルクさんの収納空間にはそういう文言はついてないみたいだし。傭兵許可証に書いてなかったから。
ダストくんや、ハーバラムさんはどうなんだろう。どれくらいはいるのかな。
翌日、ハーバラムさんとダストくんと、三人でまちへ出た。
今までのまちとは規模が違う。服装もなんとなく違った。マントのひとが少ない。お店も、屋台みたいなのは四割くらい。それにこれまで見たことがなかった美容室があった。
16・7歳くらいの女の子が、面差しのよく似た女のひとに手を握られながら、長い髪をうなじまで短くしている。結婚できる年齢になった、ということか。なんか、いやだなあ。自分だったらやだ。
女の子の不安そうな顔と窓越しに目が合った。
女の子は、なんだかほっとしたらしい。通り過ぎてしまったからその後どうなったかは解らない。
髪を短くしてるのが自分だけじゃなくってほっとした、とか?
ハーバラムさんは香木を買い取ってくれるお店へ這入って行った。ダストくんを連れていきたいが、先方が気難しいので今回は見送る、とのこと。すぐに商談をまとめてくるから、次の文房具屋さんは一緒に行こうね、じっとして待ってるんだよ、と心配げだった。
ダストくんはトゥアフェーノの顎の下を撫で、餌をあげている。
「それ、なに?」
「干したくだもの。こいつらほんとはさぼてんが好きなんだけど、今は手にはいらないからさ」
ふーんと頷く。
往来にはほかにも馬車はあり、トゥアフェーノもいっぱいいる。ろばっぽいの、牛、どう見ても熊がひいている車もある。馬も居るが、肢が太くて頑丈そうだった。
「トゥアフェーノ以外は少ないね」
「牛は、肉とか牛乳目当てで飼われてるのがほとんどだし。あとは、魔につかれた場合を考えるとな。トゥアフェーノは魔につかれても弱っちいもん」




