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寸の間なに云ってんだこいつと思った。
が、思い至る。髪型のせいか?
飾りはとってるし、腕環は泥塗れで見えない。
多分、はいって来た時髪型が気になりすぎて、下を確認しなかったのだ。そのあとはせっけんで泡塗れ、今は泥塗れ。胸のないショートカット女子……に、この世界のひとには見えるらしい。
男ですよと云おうとしたらくしゃみが出た。寒い!
ダストくんとハーバラムさんがやってくる。「うわ、マオ泥塗れじゃん」
「どろゆだよー」
じゃなくて。
勘違いされているのだと説明しようとしたら気絶した男のひとが起きあがった。こちらを見てふぎゃあと猫みたいに叫ぶ。
「あ」ハーバラムさんが耳をつまんだ。「マオ、耳飾りは?」
ハーバラムさんは、髪飾りの代わりに耳飾りを沢山つけていた。ダストくんはそもそもいっぱいつけてる。
大勢でお風呂にはいる時はそうするものみたい。お兄さん達もピアスだらけだった。鼻とか唇につけてるひとも居る。痛そう。
ハーバラムさんは困った顔で、後で編み込んであげるから先に出ときなさい、と云った。そのほうがいいだろう。素直に泥を洗い流し、浴室を出た。
タオルで体を拭いていると、外から這入ってきたおじさんがひゃっと云って飛び退り、出て行った。また勘違いされたらしい。
服を着て、外に出た。おじさんが男湯と女湯の表記を見て首を捻っている。
おじさんの視野にはいって腕環を示した。「ぼうず、おどかさないでくれよ」
おじさんはほっとした様子で男湯へ這入って行った。すみません。
体が冷えて仕方ない。髪を拭いつつ屋内へ移動した。「あ」
ロビーに傭兵三人が居る。三人ともお風呂に興味ないみたい。
「どうも」
なんとなく挨拶して、きょろきょろとロビー内を見まわす。壁にまちの地図がはっつけてあった。おすすめの武器屋や薬屋の情報も書いてある。
傭兵たちはこちらをうかがっていた。傷薬に対して、エイマベルさんはまだ疑いを持っているらしい。
「マオだっけ?」
イルクさんが云った。はいと返す。
エイマベルさんからの要請で話しかけてきたらしい。ちらっとエイマベルさんをうかがい、半笑いで喋る。
「答えなくってもいいんだけど、きみの職業は?」
「……どうして訊くんですか?」
「あー……」イルクさんがエイマベルさんを見る。「まあ、ちょっとした興味かな」




