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魔力が急速に衰えるのは本当に死の直前だそう。
魔力は知識量に比例すると考えられていた時期もあったが、今では迷信扱いだ。頭を打って記憶喪失になったって魔力は衰えない。ぼけたりしても魔力量は変わらないらしい。
ただし、増やすのは難しい。魔法をつかった回数が関わるのでは、というのが今主流の考えだ。
そんな話をしてもらっていると、馬車が停まった。「着いたみたいだね」
ハーバラムさんが馬車を降りる。ついていった。
おお。また、前よりちょっと大きいまちだ。石壁が高い。
門衛(警邏隊らしい)とハーバラムさんが会話して、通行料を払う。銀貨だった。
自分の分くらい出すべきなのだろうが、異世界だからなあ。いつなにがあるか解らんし、出来るだけお金は残しておきたい。食べもの買うのは別。
しかし、頼ってばかりも悪いので、まちへはいった後でハーバラムさんに云った。「ハーバラムさん、おれ、通行料自分で出しますよ」
「若い子が気にしなさんな」ハーバラムさんはにこっとして、耳打ちしてくる。「ステューフの薬代とでも思ってさ。あと、マオのおかげでダスト坊と一緒に居られるしね」
うーん、どっちなのかな? ハーバラムさん。親愛なのか、恋愛なのか。
とりあえず、薬代、で納得した。
ハーバラムさんがダストくんのほっぺたをつんつんしているが、気にすまい。「ハーおじさんやめてよ」
「今日は湯浴みできる宿だよ。ダスト坊一緒にはいろうねえ」
ダストくんは意外にもあっさり承諾した。
こっちは叫びたいほど嬉しい。おふろ!!
宿は三階建ての立派なもので、お風呂は敷地内にある別棟。男女でわかれた大浴場だ。
ご飯よりなによりお風呂にはいりたいと云うと、ハーバラムさんは宿賃を払いながらころころ笑った。
「ここは温泉が湧いててね。怪我にいいって、傭兵の人気が高いんだよ」
「へーっ、たのしみですー!」
一階の、食堂とは反対の方向へ歩き、外へ出る。髪が濡れていて寒そうに首をすくめているひと達とすれ違った。温度はそんなに高くないのかな?
脱衣室はなんとなく空気がひんやりしてた。大きい棚があって、隣に木桶が積んである。棚はロッカーらしい。
ひっさびさに編み込みを解き、ああ頭を洗えるとうきうき服を脱いで(収納空間へぽいして)、タオルやらせっけんやらを備え付けの木桶へ突っ込んで持ち、髪を解くのに時間がかかっているダストくんとハーバラムさんを置き去りにして浴室へはいる。
泥湯だった。
知ってたよ!そういうおちがあるってさ!




