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高くはないが、決して安くもない賃金を、村の長老達が負担しているそう。警邏隊がもっと地方まで配備されたらいいが、給金が安いらしくてなり手が少ない、とハーバラムさんは残念そうだった。普通に依頼を受けたほうが儲かるのだろうな。
ドールさんが、見込みのある子を先生たちが特別に入山させることもある、と云っていた。
ハーバラムさんの記憶によれば、リーリさんがそれだったそう。適職がめずらしい護衛士なので、御山からスカウトが来たのだ。
でも、能力との兼ね合いや家庭環境を考え、気持ち的にも行きたくないと、断ったらしい。
護衛士の職業加護は「徐々に恢復」。怪我や病気が治る速度がひとよりずっとはやい。戦いでは、魔導士の前に立って、かわりに被弾するのが主な仕事だ。体力が高ければ、常人の四倍は持ち応える。
盾役かあ。そりゃ、いやだわ。考えただけでも痛い。
リーリさん華奢だし、戦いなんてできそうにないしな。
護衛士はめずらしいし、能力値や特殊能力によってはほぼ倒されない。だから、帝国の貴族の護衛や、神聖公の警護部隊も護衛士が多いのだとか。職業しばり強い。
はっと思いだした。「あの。護衛魔導士、は、どういう職業加護なんですか」
「護衛魔導士……ああ、「状態異常軽減」だね。魔物の毒で痺れたりすることがあるんだけど、そういうのが軽く済むし、治りやすいんだって」
護衛士と比べてしょぼくねえかと思ったが、戦いのさなかに体が痺れたら危ないなんて次元じゃない。次の瞬間即死と云うこともあり得る。相手によるが、かなり役立つ能力だ。
そういや、魔法一覧に、状態異常を引き起こす魔法もあったっけ。毒で殺されにくいのはやっぱり大きい。魔王は毒効かないし。
あれなのかなあ。ゲームなんかだと、ボスって状態異常にならなかったりするもんなあ。そういうこと?
そう考えると、護衛士とか護衛魔導士は、ボス系っぽい能力してる。強そう。
「リーリのことは、等級が増えれば能力値が上がったかもしれないから、勿体ないねって、噂になってたねえ」
「やっぱり、上がるんですか、魔力も体力も」
上がるよとハーバラムさんは端的だ。
能力値不可を良まで上げたひとが過去に居たらしい。
特に、体力は上がる率が高い。代わりに、魔力と違って、加齢とともに衰える。これはもとの世界と同じと考えていいだろう。




