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「隠匿はいいね。イルクは職業と特殊能力が巧くいってる」
ハーバラムさんが紙を返す。イルクさんはちょっと居心地悪そうに目礼した。
「傭兵稼業は、協会に所属しないとできない。所属すると許可証がつくられる。あんなふうに、当人の情報と、協会内での等級である傭兵等級、これまでに傭兵として稼いだ額が書いてあるものだよ」
ステータスカードってやつな。下のほうに書いてあったのは、今までの総獲得金か。ゲームみたい。
イルクさんは二十歳前後に見えるし、稼いでいるほうかな。
「傭兵等級は等級と同じで、数が大きい程いい。でも、等級と違って、行いが悪いと下がっちまう」
えーと、なんだろう。人事評価みたいな?
「雇い主ともめて怪我をさせたとか、荷物番を任されてたのにちょろまかしたりなんかしようもんならおおごと。補填しなきゃならないし、そんなばかをした傭兵は傭兵等級が0になって、許可証にきっちり悪行が書かれる。この者は雇い主にどれだけの怪我をさせたことがある、なんて調子でね」
成程、雇う側の指標になるんだ。
「反省して真面目に働いて、傭兵等級が3以上になればその文言は削除される。ま、協会には資料が残ってるから、問い合わせればすぐに解るけどね。そうそう、傭兵許可証の更新は、ひとつの依頼が終わる度、だよ。つまり、この子達も、わたしの護衛って仕事が済んだら、わたしからもらった給金を手に協会へ行って、新しいのを発行してもらう訳」
いちいちめんどくさそうだが、それをしないと規約違反で査定に響く。意外とシステマティックなんだなあ。
協会はなにをするのかと問えば、井の管理と返ってきた。
協会は、会員から年会費や、売り上げの一部をもらう。それをつかって、各地の井、そこで作成されたキャラシートを管理している。
協会の管理しているデータは御山の学者や事務の人間なら閲覧できるらしい。誰がいつどこで閲覧した、というデータも残るが。
それと、警察みたいな、警邏隊と云うのもやっている。
警邏隊は傭兵のなかでも、傭兵等級2以上の者で構成される。お揃いの鎧と剣、マントを装備していて、名前の通り、まちや街道を警邏している。勿論、魔物が居たら戦う。いつどのあたりに魔物が出たなんて情報も、このひと達がみまわって集めている。
「ただし、地方ほど数が少ないね。荒れ地のすぐ傍の村にはそもそも居やしない。だからわたし達は、自腹切って村をまもる傭兵を雇うんだ」




