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入山の為には、魔力優以上、もしくは体力優以上が必要。それがなければ、適職がめずらしいか、特殊能力がめずらしいか。だそう。
……魔力:優だし、職業はめずらしい魔王だし、特殊能力もてんこもりだ。入山できるな。その前に殺されると思うけど。
自分で考えたことに自分でショックを受けて溜め息を吐く。ダストくんに頭をぽんぽんされた。
「レントの近くにも井があるから、そっちでちゃんと能力証出してもらえばいいって」
いやそうじゃなくて。
適当にごまかした。そうだねー、とかなんとか云って。
馬車へ戻る。荷台へ乗り込むと、傭兵たちは手荷物の確認中だった。
慌ててかきあつめ、イルクさんが預かる。収納空間持ちらしい。荷物は、予備のものらしい武器や、薬の空き壜など。
馬車が動き出した。
気になっていたので、隣へ座るハーバラムさんへ訊ねる。
「嘘を吐いて仕事をもらうって、どういうことですか?」
「ああ、ダスト坊の云ってたやつかい?」
ハーバラムさんは、収納空間へ手を突っ込んで、なにやら取り出した。
ひらぺったい、石? 製の、カードみたいなのだ。名刺くらい。
ハーバラム・ルジャラーディ 体力:良 魔力:可 職業:射手
と彫って、色をつけてあった。
ハーバラムさんはそれをひっくり返す。そちらには、家紋みたいなのが彫りこんである。
「これは、商人の協会で発行してもらえる、商人証。所属して、能力証明書を提出するともらえるよ。わたしのは、ほら、色が灰色だろ?」
慥かにそうだ。お墓っぽい色だなあと思っていた。
「灰色のは、問題を起こさずに十年以上商売をしているってことになるんだ。白い程信用できる商人だよ」
「へえー」
「商人証を見せずに商談をしようとするのはろくなやつじゃない。同じように、能力証明書を出さずに、自分は体力優だとか、こんなすごい魔法をつかえるとか、ほらをふくやつがいるんだ」
学歴詐称とか経歴詐称みたいな感じか。能力証の大切さは解った。
「傭兵だって、傭兵協会発行の傭兵許可証を持ってる。商人証よりもっと厳しいよ」
厳しい?
ハーバラムさんがイルクさんに声を掛け、傭兵許可証を貸してもらっている。
ハーバラムさんの手の上のそれは、A6サイズで、羊皮紙だった。
イルク・シュナースヴェン 等級:20 体力:良 魔力:不可 職業:戦士 傭兵等級:2
特殊能力:収納空間 速歩 隠匿
貝貨:2 銀貨:159 エスター:0
平たいことを「ひらぺっちゃん」と云ってしまうんですが、方言ですかね?




