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見ながら歩いていると頭がぐるぐるしてきた。
前を見る。ダストくんは回廊をひたすら歩いている。八角形の建物の内側を見たが、草が元気よく生えていて、手入れされていない感じだった。で、泉だか湖だかは?
勘違いしていたよう。
回廊をずーっと歩いて、ダストくんに促されるまま、階段を降りる。この建物にはいる時も階段をつかってだった。
多分、はいったのと丁度反対側。そこへ降りて、木立を暫く行くと、突然目の前がひらけた。
「わー」
湖、だ。それも、かなり大きい。
ダストくんがにこっとする。「こんなに広い井はめずらしいんだぜ。マオ、運がいいな」
頷くしかない。湖は、水がきらきらと光を反射して、綺麗だった。
水源を囲うように建物があると思っていた。実際は、湖の手前に建物。回廊をわざわざ通ってここまで来たのは、参拝の方法なのかな?
「ほら、青少年」
ハーバラムさんがくすくす笑いながら袖をまくった。「井が綺麗で見蕩れるのはいいけど、さっさとお参りしちまおう」
ダストくんも袖をまくったので、真似する。
三人でかがみこんで、湖で両手をゆすぎ、目を洗った。三人とも収納空間持ちなので、タオルを取り出して顔と手を拭う。
ハーバラムさんが湖を覗き込んだ。
「変化なしだね」
ダストくんがハーバラムさんの肩越しに水面を見て、わあ、と声をあげた。「ハーおじさん、等級23もあるの? すげー」
「ふふん。ダスト坊は?」
ダストくんが水面を覗く。と、いうか、顔をうつしているのかな?
ハーバラムさんも水面を見た。「うわ、等級31じゃないか。いやみな子だね!」
「だってハーおじさんは入山もしてないし、魔物とあんまり戦わないだろ。それで23もあったら凄いよ」
「あーあ、ダスト坊に抜かれてるとは。体力も魔力もダスト坊のが上だし、自信失くすよ」
ハーバラムさんが芝居がかった口調で云った。ダストくんが上体を折って、くっくっと笑っている。
あ、やばくないこれ?
他人にも見えるんじゃん。
「マオもうつしたらどう?」
ダストくんの頭を意味なくぽんぽんして(多分、ダストくんの頭の位置が丁度よかったからだ)ハーバラムさんが云う。
目を泳がせた。「え~っとぉ~……」
「ああ、見られたくないんだね。わたしとダスト坊は後ろ向いてるから。ね?」
ハーバラムさんがダストくんを引っ張って、水際を離れた。
メニューで見れるんだけど、等級の確認なんかで見るのが普通っぽいし、ここで見ないのは変か。




