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「えー、いや、えっとお」
「やりかた教えてやるよ」
おいで、と手をとられた。引き摺られるどころかひょいと体が浮いた。
くさむらのなかにある、石畳を敷いたみちへ置かれた。後ろのほうで、ハーバラムさんの声がする。「ちょっと寄り道するから、荷物番しといておくれ」
「よっし、あっちに証人が居る筈だぜ」
ダストくんに引っ張られ、みちを進む。力強いなー。
暢気にしてる場合じゃねえ!職業ばれたら終わるぞ!
「あのさ、あのさだすとくん、のうりょくしょうってそんなにだいじ? お、おかねがさ」
「嘘付いて仕事もらおうとするやつもいるからな。傭兵協会なんかは提出しないと所属できないんだ」
まじで? じゃあ御山もそうなんじゃないの? 下働きになるの無理じゃね?
あわあわする。口は動くのだが、巧く喋れない。
ハーバラムさんが追い付いた。三つ編みがゆらんゆらんとする。
「ダスト坊、マオはものじゃないんだよ」
「え? あっ、ごめん。マオ、軽いなあ」
漸くとまともに石畳を踏んだ。
ハーバラムさんが呆れている。「ダスト坊が怪力なんだよ。戦士になってもうだいぶん経つんだろ?加減できないもんかね?」
「ちゃんとしてる」
「ダスト坊は体力が優だろ。それで体力強化がついてるんだから、下手したら体力が特優相当になってるかもしれないんだよ」
ごめんなさいとダストくんは素直に謝る。ハーバラムさんは頷いて、気を付けなさい、を重々しく云った。
こ、この流れで、お金もかかるんだし無理強いはいけないよ、とか、マオがいやがってるんなら無理につくらなくってもいいねえ、とか、云ってくれませんか? ハーバラムさん?
仰ぐ。見詰める。いやなんです死にたくないんです証明書発行は勘弁してください。
ハーバラムさんは笑みを浮かべた。解ってくれたのかもしれない。ハーバラムさん!
ひょいと、空いた手を掴まれる。「じゃあ、マオの能力証明書をつくろうか。お金はわたしが出すよ」
にげみちをふさがれただけだった。
どうしようほんとに逃げるか? 走って。いやー追いつかれるか。どうして逃げたのか訊かれたら答えられんし。やばいって死ぬって。祇畏士の数は少ないらしいからすぐには滅却されんのだろうが、掴まる。多分半殺しにされる。だって弱っていないと滅却できないからね!
そのあとは滅却=死だ。あああああどうしよう!




