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午后、馬車に揺られながら、ハーバラムさんにレントのことを訊いた。御山のすぐ下にある、裾野で最大のまちだそうだ。
山肌にへばりつくみたいに家が建っている区域もあるそう。御山へ入山したいひとが各地から集まるから、大変な活気があって、いろんなものを売っていて、「羽持ち」や「角持ち」のひと達も大勢見かける。
各地からの商人と有利な交渉を進めるには、共通語が堪能なことが絶対条件らしい。「訛り」は、田舎っぽい、とか、教養がない、というイメージみたいだ。
「はねもち……って、こう。羽が生えてるひとですか?」
「そう。マオはあんまり見たことがないの?」
頷く。祇畏士みならいのフォージくんしか、羽のあるひとは見たことがない。
ナジさん達の話からすると、あのパーティの祇畏士さんも、羽があるひとっぽいけど。飛んでついてくるっていってたから。
「羽持ちは、煩わしいからって羽を仕舞ってたりするからねえ。羽持ちは祇畏士に多いから、ありがたがるひとが居て面倒なんだって。でも、裾野だと、大っぴらにしてるほうが多いかなあ」
ハーバラムさんはにやっとした。「祇畏士や羽持ちを追いまわしたら、田舎者だと思われるからね」
ほう。芸能人みたいな扱いなのかな?
祇畏士には寧ろこっちが追いまわされそうなので、成る丈近寄らないようにしよう。あ、でも、御山にはいっぱいいるのかなあ?
「祇畏士さんって、数は少ないんですか?」
「そんなにいないねえ。荒れ地近くで暮らしてるとよく見かけるから多い気がするけど、神聖公国には……今、六十人くらいだったかな。もっと少ないかも。大体、二十万人にひとりくらいの割でしか見つからないものらしいからね」
そんなに少ないんだ! よし、生存確率アップ!
にやついてしまっていたらしい。不思議そうにされたので、ごまかすために還元士や癒し手の割合も訊いてみた。
還元士は五万人にひとり、癒し手は三万人にひとりくらい。
ただし、祇畏士と違ってほかに適職があったらそれを選ぶ、というひとも少なくはない。
癒し手の場合はそれが顕著で、魔力が乏しいのでなっても無駄だと判断したり、すでに恢復魔法をつかえるので尚更取らなくていいと考えるひとも居る。
恢復魔法は、「癒しの力」という特殊能力があればつかえるのだが、癒し手の職業加護も「癒しの力」なのだ。重ねると強くなるらしいと云われてはいるが、戦争がなくなって久しい世の中、大怪我はなかなかしない。魔物退治も、頭数を揃えておけばいい。重ねてまで恢復魔法の効果を上げる意味はあまりない。




