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集まっているひと達が拍手した。お茶を配っていた男の子と、同じ格好の年若い男性達が、木製のカルトンを掲げ持って畑へはいる。カルトンには釘がいれられていた。リーンさんとシシーさんが、すーっと厨房へ戻っていく。
カルトンは畑の各所に設置され、司祭は話を続けた。「開拓者の大いなる恵みを戴く為に、これより釘を還元します。その後に、収穫を分け合いましょう……」
ターツァさんが、釘なしの茨の冠と一緒に持った杖をまわして、カルトンへ近付いていく。みんな、胸の前で指を組み、軽く俯いた。俺もそうする。お祈りの声が左右から聴こえてくる。
ちらっと覗き見る。ターツァさんは一礼してから、カルトンごと釘を還元した。ひとりひとりのお祈りの声は小さいが、集まるとかなりのボリュームだ。ターツァさんがなにか云っているのかは聴こえないが、口許は動いていた。
還元が終わり、きらきらが辺りに立ち込めている。そこへ、絹の袋と不格好な鉄の塊が運び込まれた。ターツァさんがそれを還元し、男性達が絹の袋へ素を集める。袋の口を縛ってしまうと、司祭が左手をあげた。
「それでは、収穫を分け合いましょう。それから食事をとるのです。ありがとう皆さん」
「ありがとうございます司祭さま」
唱和のあと、列が崩れ、幾つかのグループがつくられた。それぞれ楽しそうにお喋りしている。「ねえ、東の七地区に、新しいお店ができたの」
「知ってるわ、あそこおいしい油を売ってる……」
「……なのよねえ。それで苺だけど……」
「……っていう宿で、ディファーズふうの菓子を出してるんだと」
「近いだろ?」
「帰りに寄っていかないか……」
ぼーっとしてしまった。男性達がかごを持ってやってくると、そこへ行列ができる。俺も並ぼうとすると、ミューくんに制される。「じゃがいもですよね? 俺がもらってくるので」
「あ。うん、ありがと」
ミューくんがそちらへ行くと、何人か順番を譲った。流石の人気だ。じゃがいもは不人気みたいで、ミューくんはすぐに、麻の袋にはいったじゃがいもを持って戻ってくる。
「どうぞ」
「ありがと……わあ、いっぱいはいってる。うれしい」
俺がはしゃぐと、ミューくんはにこっとした。「マオさんって、素直ですね」
「うん? んー、まあね。ほんとにありがと。次、来てくれた時は、おまけするよ」
「わ、嬉しいや」
ミューくんは本当に嬉しそうに云う。俺はじゃがいもの詰まった袋を収納し、厨房を示す。
「じゃあ、お手伝い残ってるから」
「え」
「ミューくんも食べるんでしょ? 張り切ってつくるね」
俺がにっこりすると、ミューくんは頭を抱えた。




