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異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
買いものに行ったら帰り道が異世界につながっていた
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55

 

 お昼は食べられなかった。

 案の定というか、魔物に襲われたのだ。


 町を出てから一時間もたっていなかった。

 イルクさんの声がして(なんと云ったかは聴き取れなかった)馬車が停まり、ステューフさんとエイマベルさんさんが外へ出て行った。

 すぐにハーバラムさんが乗り込んでくる。顔がまっさおだった。「ああいやだ、わたしはきったはったは苦手なんだよう」

「ハーおじさん、こっち」

 ダストくんが招き寄せる。ハーバラムさんは涙目でダストくんの隣へ体を押し込み、ダストくんへしがみついた。ばらかな?

 ダストくんは苦笑いだが、いやがりはしない。

 ハーバラムさん大丈夫なの、とこっそり訊いてみる。ハーバラムさんは昔、家を壊されて以来、魔物が苦手なのだそう。その時家のなかに居て、危うく圧死するところだった。

 だからこれくらい怖がっても仕方ないし、すぐ落ち着くんだ、とダストくんは低声で云って、ハーバラムさんのせなかをぺたぺた撫でている。

 馬車がゆっくり動きだした。エイマベルさんが飛び乗ってくる。「数が多すぎる。逃げます」

 速度が上がった。体がぽんと宙へ浮く。ダストくんが引っ張ってくれたおかげで箱への激突をまぬかれた。

「ありがと」

「舌を噛むぞ」

 これ以上滑舌が悪くなってはたまらない。大人しく口を噤み、ダストくんの服を掴んでいた。


 どれだけ走り続けたろう?

 馬車の速度が弛んだ。外から怒鳴り声がする。「エイム! 薬を寄越せ!」

 エイマベルさんが飛び出していった。馬車が停まる。悲鳴が上がる。

「ステュー!」

 ダストくんと顔を見合わせた。

 どうやら、傭兵の誰かが怪我をしたらしい。ハーバラムさんがふらふらと外へ出ていく。

 ダストくんとついていった。

 馬車の横に、ステューフさんが倒れている。エイマベルさんとイルクさんで処置中だった。エイマベルさんがステューフさんへ薬を振りかけている。イルクさんはステューフさんの胸元をおさえていた。

 血が流れている。沢山。

 気分が悪くなってきた。あの血の量はまずい。

 鞄から傷薬を取り出した。後先考えてはいない。血の量が多くて気持ちが悪かったから傷を塞ごうと思っただけで、助けようと思ってはいない。

「これ」近寄って行ってエイマベルさんへ差し出した。「お薬です。服ませてあげて」

「は?」

「はやく」

 強く云うと、エイマベルさんは壜を受け取った。震える手で栓を抜き、ステューフさんの胸元へ中身を垂らす。服ませてあげてっていったのに。

 だが、不思議なことが起こった。

 壜が空になったと同時に、ステューフさんが目を開けたのだ。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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