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「奇術師は魔導士の二段下だねえ」
ハーバラムさんが香木を買い占めて馬車へ積み込み、傭兵たちと待ち合わせしているところへ向かう。途中、職業のことを質問してみた。
ハーバラムさんとダストくんで教えてくれる。「魔導士なら「魔力上昇」だけど、奇術師は「わずかに魔力上昇」だよ」
「薬屋は薬師とか医師の下だな」
「どういう職業加護なの?」
「慥か、「薬の使用時に3%効果上昇」じゃなかったっけ。ハーおじさん?」
「そんなんだったね」
ハーバラムさんはダストくんにおじさんと呼ばれて嬉しそう。親戚のおじさん(には見えないかな。お兄さん)という感じ。
ダストくんが胸を叩いた。
「戦士は「体力上昇」だよ」
「わたしは「射手」。目がよくなるんだ」
へえー。色々あるんだなあ。
しかし、職業でここまでスキルに差があるとは。魔王が強いのはよく解った。し、戦士が御山で馬鹿にされたというのもなんとなく解る。魔王クラスにスキル満載はなかなかないだろうが、体力の上昇だけ?という感じはしなくもない。
いい匂いがする。
目を遣ると、お菓子を売る屋台だった。この町のお店はほとんどが屋台だ。
お菓子の屋台は幾つもある。
「マオ、くいたいの?」
じっと見ているとダストくんが呆れ声を出した。仰ぐ。「買ってきていい?」
「いいけど、エスターで払えよ」
「はーい」
いそいそと屋台へ駈け寄る。売っているものは小振りな揚げパンだった。大きな鍋から今まさに、ざるをつかって揚げパンをすくっているおじさんに、ふた盛り下さいという。
エスター五個。安い。揚げパンは大きな鉢へいれられ、たっぷりと砂糖を纏う。
わら半紙みたいなのに包んでくれた。エスターを渡して包みをもらい、収納空間へいれる。後でおやつに食べるのだ。……ひとりで食べるのはちょっとなあ。
みんな用にもう四盛りもらった。エスター九個だから、多く買えばおまけしてもらえるみたい。幾らかは紙代なのだろう。
馬車の許へ駈け戻る。トゥアフェーノが欠伸していた。
「もうくったの?」
「ううん、あとで食べる」
「揚げたてのほうが旨いぜ」
「いいの」
傭兵たちと合流した。這入ったのと反対の出入り口から町を出る。ハーバラムさんはそちらの兵とも知り合いで、楽しそうになにやら喋っていた。
魔物の目撃情報を仕入れていたらしい。近頃、行商人が襲われているから、気を付けるように、とのこと。
「御者はわたしがやるよ。イルクもこっちについといてくれ」
ハーバラムさんは「射手」だから目がいい。遠くの魔物でも見えるのだと思う。
傭兵たちは異を唱えず、そのようになった。




