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お昼になって、馬車が停まった。
馬車から降りて、かたまっていた体を解し(体中からばきばきと音がした!)、昼食だ。焼き菓子と、ドライフルーツと、干し肉、お水。煮炊きはしない。
それが終わると、御者がダストくんに代わった。
再び荷台へ乗り込む。今度はダストくんではなく、ハーバラムさんが一緒だ。
「あらためて宜しく、マオ」
ハーバラムさんは足を崩して箱へ寄りかかる。「乗り心地は?」
「えっと、体がこりました」
ハーバラムさんは大笑いした。
荒れ地に近いところのひと達は、みんなお喋りなようだ。ハーバラムさんもそうで、息もつかずによく喋る。圧倒された。
ハーバラムさんは、十年くらい前から、サイン商会に代わってまちで商品を売っている。ダストくんはその頃から知っていて、昔はもっと可愛げがあったとハーバラムさんは嘆いた。
「ナジの家でご相伴にあずかった時なんか、ダスト坊はわたしの膝に乗りたがってねえ。ハーおじさんのとこに行くんだって村を出ようとしたこともあったんだって。わたしにとったら息子みたいなもんだよ」
ダストくんの小さい頃を想像すると、可愛い。にやにやしてしまった。
そのあとも、ダストくんのエピソードを色々聴いた。傭兵たちはもう喋っていない。流石に雇い主の前でべらべら喋る勇気はないか。
陽が暮れる前に、目標だった町へ着いた。キユスという町だ。
周囲に背の低い壁を巡らせてあって、入口には武装したひとがふたり立っていた。
馬車から降りて、一応面通しがあり、町へはいることを許される。ハーバラムさんは兵と顔見知りで、軽口をたたき合って笑っていた。
トゥアフェーノへなにやら食べさせながら、ハーバラムさんが云った。
「じゃ、宿に泊まるよ。ダスト坊はわたしとおんなじ部屋がいいよねえ」
「ハーおじさん!」
「ああ、やっと呼んでくれた。さっきはハーバラムさんなんて云われたから寒気がしたよ」
けけけと笑うのに、ダストくんは渋面。あるある。幼少期を知ってる親戚のおじさんおばさんって、大人になってから会うと気まずいんだよな。
結局、ダストくんはハーおじさんと同じ部屋になったらしい。傭兵も同じ部屋。
……てことはひとり部屋かあ。寝相悪くても大丈夫だな。
宿は、二階建ての、土造り。
馬車とトゥアフェーノは宿の裏手に置いておく。イルクさんが見張りにつくそう。
建物は一回が食堂になっていて、先ずそこで晩ご飯になった。




