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マルロさんが、銀貨40枚、ヨーくんが銀貨32枚。一晩護衛をしてくれて、薬材の採集にはかかわらず、それの売り上げからの配分もなし、という条件だ。文句のつけようのない条件なので、雇うことにした。お弁当付きですよと云うと、ふたりは小躍りして喜んだ。
食堂を閉めてからすぐ行くと決める。夜十一時ごろに東門前で待ち合わせだ。三人には前払いで銀貨を渡し、ヨーくんが代表で協会へ向かってくれた。傭兵を雇う手続きは、代行してもらえる。
そうと決まれば、警邏隊用とライティエさん用、それに俺達用の三種類のお弁当を、とっとと拵えなければ。
警邏隊用は、もうお馴染みになった、ラップサンドウィッチ。具は、鶏むね肉をかりかりに焼いて甘酢で煮たもの。それをうすめに削ぎ切って、みじん切りのねぎと生姜を炒めたものと一緒にくるくる巻く。デザートは軽くバターで炒めた梨を、バターとお砂糖を同量まぜあわせたものと一緒に巻いた。
ライティエさん用には、量重視とのことなので、ホットドッグ。しゃきしゃきのレタスとナスタチウム、ぱりっと焼いた大きな腸詰め、お水にさらしたスライス玉ねぎを、ふかふかにぶ厚く焼いて切れ目をいれたパンケーキにはさむ。味は、トマトソースにマルメラーダをまぜてぐつぐつ煮込んだ、甘辛いソースだ。
デザートは、レーズンバターを詰めて焼いたりんご。バットに沢山並べて焼いた。このまま持っていけば、今の寒さなら火のはいっているだろう暖炉の上に置いておくだけで、多少あたたまる。
俺達の分は、両方の余りでまかなうことにした。ちょっと形の崩れたラップサンドウィッチや、レタスが足りなくてはいっていないホットドッグなど。充分おいしい。
警邏隊の分のお弁当はみずやにいれた。ライティエさんの分は、後で本人が取りに来る。俺達の分は俺の収納空間にいれた。準備は万端。
さあ、ご飯食べよ。お夜食と夕ご飯はべつばら。
ベッツィさんがよろけて、テーブルへ手をついた。
俺は口いっぱい頬張っていた蒸しパンを嚥み下す。「大丈夫ですか?」
「すみません。ちょっと、寝不足みたいです」ベッツィさんはぺろっと舌を出す。「寝坊したのに、おかしいですよね」
ベッツィさんは自分のつかった食器を流しへ運んだ。グロッシェさんがお皿をうけとり、洗う。強行軍で裾野まで来たのだし、ツァリアスさん達には暫くしっかり休んでもらいたい。あたたかい寝床があるだけでも違う、かなあ。
俺は残りの食糧を口へ詰めこんで、トレイを下げた。食糧の準備以外にやることはあった。ブーツとローブの点検だ。




