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生地を切って、丸め、平たくのばす。円形だ。それを、鉄板で焼く。最後に直火で炙ると、ぶかっとふくらむ。
紙を敷いたお皿に、チャパティを幾つかのせる。それとぎゅうぎゅう焼き。ぎゅうぎゅう焼きの中身は、ベーコンを一口大にしたもの、ベビーオニオン、人参・蓮根・じゃがいも・キャベツの乱切り、あと試しにゆでたまごをひとつ。けっこうおいしそう。
デザートにカットしたりんご(塩水で洗って色止め済み!)をつけて、定食完成。トレイをベッツィさんがワゴンに移してくれるので楽ちんだ。
「マオ」セロベルさんがアーチから顔を覗かせた。「まずいぞ」
「なんですか?」
借金とりでもきた?
セロベルさんは顔をしかめた。
「ライティエが今日は十人前くうってよ。材料間に合うか?」
呆れたような怒ったような声に、俺は脱力してしまった。
ライティエさんの発注分もつくり終え、一旦お休みだ。
手を洗いながら、ふたりも食べる?と肩越しに訊いた。ミューくんは戸惑ったように小首を傾げ、ジーナちゃんはクッキーを噛むばかり で反応しない。
そこへ来客があった。ミスラ商会さんだ。
「すみません、無沙汰を致しまして」
「いえいえ」
「西南街道に魔物が大量発生したそうで、大豆が届かなかったんです」
お豆腐やおからを収納空間へ移す。西南街道、ってどこだろう。
クヤさんが申し訳なげに云った。「うちは普段、ロア産大豆しかつかわないので……」
ロアからの流通が滞ってたのかな? 多分。
なんでも、注文していた大豆をのせた馬車が、谷底へまっさかさまだったらしい。で、あわてて別の大豆を確保しようとしたものの、大豆そのものが品薄なので、大手の商会に買い占められたらどうしようもない。
「お味噌、大丈夫ですか? 醤も」
「そちらの分だけはなんとか。今日の豆腐は、シアイル産の大豆ですので、味が違うかもしれません」
ほう。
クヤさんは、明日の分の大豆を手にいれないといけないと、走るように出て行った。俺はちょっと考えて、お豆腐を一丁、まないたに載せる。切って、ひとかけら口へ含んだ。
甘め、かなあ。木綿豆腐なのだけれど、滑らかな感じ。お菓子にしちゃおう。
お豆腐を布巾で包んで、重しをのせ、水気をなるたけ切る。
その間に、ミルクを鍋であたため、お酢をいれて、ボウルとざると布巾を重ねたものでこす。カッテージチーズだ。ボウルにたまる乳清はパンケーキをつくる時にまぜるとおいしい。
空いたお鍋でお酢を煮切る。香りからつんつんした酸味がなくなったら、軽くさましてお砂糖とレモン汁をまぜる。そこへ、カッテージチーズ・解したお豆腐・植物油をいれ、よくまぜる。
さらに、ふるった小麦粉と重曹を加え、粉っぽさがなくなるまでまぜたら型に流し込み、オーブンへ。




