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たしかになあとラトさんが云い、ナジさんも頷く。た、たすかった。
ドールさんも参加して、なにやら議論になっている。難しくて解らん。そして、眠たくなってきた。
「マオ」
はっと我に返った。「はい」
うとうとしていたらしい。くっ、睡魔め。最近寝る前に本読んでたから寝不足で……。
ドールさんがお茶をくれた。ナジさんが喋る。
「残念だが、我々ではもうこれ以上は、力になってやりようがない。……マオは、これからどうしたいね?」
おおう、いきなりだ。
でも、いつまでもここでお世話になるわけにもいかない。それに、もとの世界に戻りたい。
その為には、多分、御山で調べるべきなのだろう……神話に出てきた神さまが、「よそ」から人間や神々を連れてきた方法について。
かなり気になったから、神話や宗教関係の本で、血眼になってさがしはしたのだ。でも、「よそからつれてきた」とあるだけ。
それでも、気になるところがあった。
南のほうに、魔王を信仰する「邪教」がある、ということ。その宗教は、「魔王を呼び出す儀式」を伝えている、という、うそかほんとか解らん一文が、隅っこに小さく書いてあった。一冊にしか書いてなかったから、南の宗教に偏見があるひとの妄想かもしれん。でも、本当かもしれない。
御山には色々な資料があり、研究もしている。そこになら、「よそ」へ行く方法が解るのではないか。或いは、この世界へ飛ばされた仕組みが解るかも。
戻る方法が解る根拠はないし、そもそもあの本の記述が勘違いまたは妄想と云う可能性は充分だ。戻る方法が解っても、実行できる保証はない。けれど縋るわらはそれしかない。
とはいえ。
御山は、才ある若者の学びの場だ。
入山にはめずらしい「特殊能力」もしくはめずらしい適職がある、或いは体力と魔力がどちらも高い、と、条件が厳しい。ついでに、井でつくったキャラシートを提出する義務があるらしく、魔王である自分はそこでもう積んでいるのだ。
あと多分年齢的にもアウト。学生になるのは無理。なにかの間違いでなったとしても、資料をなんでも自由に閲覧できるとは限らない。
でも、ひとつだけ、昨夜寝入り端に思い付いた。ろくでもない気もするが、これにかけるほかあるまい。
「御山で、下働きしたいです」




