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「ありがと、ドール、マオ」
「朝からお水も飲んじゃいなかったのよ」
「ヤームが居ないからお水が足りなくって困ったの」
お皿を空にするとお茶をすすりながら三人は口々にそう云った。
ドールさんが苦笑いで、マンゴーをすすめる。バドさんが飛びついた。
「そんなに大変なら、わたしも加勢に行ったのに」
「マオをひとりにできないでしょ」
「やー、参った参った。まさか祇畏士さまが同時に四人もいらっしゃるなんて」
「あら、お餅足りたの」
「イースハのお母さんが持って来てくれたわ。ああ、そうだった、マオありがとう!」
突然こちらに話が来たのできょとんとしてしまった。
なんでも、蜂蜜が足りなくなるところだったそう。昨日渡しておいたのが役立ったのだ。よかった。
祇畏士一行×4は、行へ行く前が三組、行終わりに通りかかったのが一組。それぞれ接待は要らないと断ったらしいが、それでももてなすのがここの流儀だ。
「この村は裾野でも一番か二番くらいに荒れ地に近いからね」
リーリさんがお茶のおかわりを注ぎながら云うと、バドさんが激しく頷く。
「祇畏士さまがおいでにならなくなったら、魔物に飲み込まれっちまう」
「ほんとにありがたいよねえ。全員顔やら腕やらにこんな」
ルルさんが痛そうな顔で、掌くらいの大きさを示す。「傷痕があってさあ、申し訳ないったら」
「ねえ。でも滅却してくれなくなったら困るしねえ」
「ねえ!」
「傭兵連中がもっと安くまもって差し上げたらいいんだよねえ!」
そのあとはひとしきり、最近傭兵の雇い賃がまた上がった、という愚痴だ。村でも何人か雇っているよう。
「協会がオウボウなんだよ」
「あの子たち申し訳なそうでさ、でも協会への上納金が上がったんだって」
「今までが不当に安いなんて協会長がほざいてるんだよ。家も飯も、村によっちゃ女まであてがってやってるってのに」
そう嘆いてから、バドさんははっとして口を覆った。
四人がこちらをうかがう。??
首を傾げた。「なんですか?」
「あー……ううん、ごめん」
「マオ、さっきの煮込み、おいしかったわ。ありがとうね」
?
なんかごまかされた感があるが、……ま、いっか。
行をやる時、祇畏士はかならず還元士と癒し手を連れてゆく。だからその職業のひとも四人づつ居た訳だが、還元士たちが村の西側にあるごみ捨て場を還元してくれたらしい。手が足りなくって仕方なく積み上げていたごみが、跡形もなくなったそうだ。
祇畏士や還元士が人々から尊敬され、感謝される理由が分かった気がする。
その対極にある魔王は、やっぱり一番の外れ職だなあ。はあ~。




