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なんだか脱力した。あの子、とらえづらいなあ、色々。
「マオ、ちょっと来てくれ」
セロベルさんに呼ばれたので、そちらへ行く。
椅子をすすめられた。座る。ツァリアスさん達の向かいだ。
セロベルさんがツァリアスさんを示した。「あらためて。こいつはツァリアス。俺の一期後輩で、開拓者、職業は還元士だ」
「宜しくお願いします」
ツァリアスさんが会釈する。俺も会釈を返した。
「で、こちらが……」
セロベルさんが示すと、ツァリアスさんの奥さんは深々と頭を下げる。
「ツァリアスの妻で、リジェベットと申します」
「ベッツィは耕作人です」
「マオです。よろしく」
とりあえずなのる。あちらさんが職業まで包み隠さず(かどうか、実際のところは解らないけれど、一応信じるとして)話してくれたのは、よなかにおしかけたので印象が悪いだろう、と考えてのことか。
食事をとって体もあたたまったか、ふたりとも顔に血色が戻っていた。それにしても、痩せてる。
ツァリアスさんが、肩口までの灰色の髪にピンクの瞳、肌は白桃の皮みたいな色。アジア系に見えなくもない。汚れの目立つチュニックとローブに、ずぼんとブーツ。
ベッツィさんはごく淡い青紫の髪に、栗色の瞳、浅黒い。顔立ちで云ったら、ヨーロッパ系っぽいかな。色褪せたドレス? ワンピース? と、すり切れたローブに、たしかツァリアスさんと同じようなブーツだった。
年齢は、ふたりとも二十歳前後……に見える。ツァリアスさんはセロベルさんの後輩だというから、それくらいでも間違いはない筈。
ツァリアスさんがもう一度頭を下げる。「突然おしかけたのに、こんなにおいしいものをご馳走してもらって、本当に感謝しています。ありがとうございます」
「いえいえ、お構いもしませんで」
ん? なんかいまのおかしいかな?
まあいっか。もう云っちゃったし、と考えていると、セロベルさんの顔が目にはいった。
セロベルさんは、戸惑った表情で、後輩を見ていた。「おまえ。……ほんとに変わったな。ツァリアスとは思えない」
「セリィ先輩。ありがとうございます」ツァリアスさんは顔を歪める。「俺みたいな駄目なやつを追い返さないでくれて……ほんとに……」
「あなた」
ベッツィさんがツァリアスさんの肩に手を置いた。
ツァリアスさんはその手へ自分の手を重ね、うん、と頷く。
「すみません。……マオさん。開拓者がどういう特殊能力か、ご存じないんですよね」
「あ、ハイ、すみません常識がなくて」
「全然そんなことないです」ぶんぶん頭を振って、ツァリアスさんは続ける。「説明、しますね。俺達の情況も……」
情況。




