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苦笑いするしかない。「平気」
「なんだったの、あの……爆発?」
「魔法だろ」ヴェンゼくんの素朴な疑問にリーニくんはあっさり返し、俺を見る。「誰がやったんだ? 私兵? それとも、あいつらを縛り上げた、誰か?」
「んー、解んないや。俺、逃げるのに必死だったから。三人と別れた後、すぐに見付かったのはよかったんだけど、思ったより数が多くて困ったよ」
「マオは度胸あるなあ」
リーニくんが感嘆したように云い、ヴェンゼくんがこくこく頷いた。冒涜魔法があるから暢気でいられたってだけで、尊敬の眼差しを向けられるようなことではない。魔法なかったら俺だって泣いてた。
あ、魔法あっても泣いたな。ほーじくんの魔法に驚いて。
「マオ」
ほーじくんが俺の袖をひっぱった。リーニくん達三人は、すっと目を逸らして、俺とほーじくんから距離をとる。
「なあに?」ほーじくんへ顔を向けた。
ほーじくんはちょっと眠たげだ。目蓋が重そう。「……眠そうだね、ほーじくん」
「ん。あの。……お店、行きたいけど、行けなくて、ごめんなさい。また来るって云ったのに」
?
ああ、そっか。ほーじくん、まだ一回しか来てくれてないっけ。
俺は頭を振る。「いいよ」
「ほんとは」ほーじくんは苦労して言葉をさがす。「……ほんとは行きたい。マオに会いたいから。でも先生が、会っちゃだめだって云って。あにさまが、掛け合ってくれたけど、だめなんだって。ぼく、……」
うぎゃあかわいい。鳥の目がうるうる。
思わずぎゅっと抱きしめた。なんか解らんが、可哀相なんだもん。「いいんだよ、ほーじくん」
「マオ。……祇畏士になったら、迎えに行くから」
……うん?
今なんと仰言いました?
ぱっと、離れた。「ほーじくん?」
ほーじくんは俺の手をとる。
「祇畏士になったら、誰も僕に指図できない。させない。マオを大切にするから、その時は結婚して下さい」
……結局そこに辿り着くのか、ほーじくん。
うーん。
絶対、魔に反応してるだけだと思う。さっきも、マオがいる感じがした、って云ってた。冒涜魔法に反応して、だろう。
ほーじくんは善なる魂、俺は悪しき魂。あいいれない。天敵で、不倶戴天で、並び立つものではない……と、こっちの世界で学んだ。
でも……重大な問題があるのだ。
ほーじくんが綺麗な羽と、羽毛みたいな髪を持っていること。そして俺が鳥大好きなこと。
同性とかどうでもいい。羽毛! 羽毛なんだぞ! 大きい鳥と思えばいいじゃんか!
だめだめ、年齢考えろ、事案だ。もとの世界でもこっちの世界でも(シアイルは違うみたいだけれど)未成年だぞ。宜しくない。それに、俺はもとの世界に戻る予定なのだ。戻れるかどうか解らんけど。
ああ、でも……。
「えーとね」
葛藤の末に俺は答えた。「考えとく」
それってもう承諾と一緒じゃん。ああ、意志が弱い。




